【ノンプログラマーの予約システム開発記 #11】予約システムが、画面の外に出た日

事業者の方へ

前回までのあらすじ

「半年・500万円」と言われて諦めていた予約システムを、お盆休みにClaudeと作り始めた話を書いています。

前回は、公開後の整備について書きました。作った本人には不具合が見つけられないこと、そして「人は忘れる・間違える」を前提に仕組みを作るという話です。

今回は、その続きです。

予約システムが、画面の中だけの話ではなくなりました。


解決できていなかった、鍵の問題

第7話で、メールでは解決できなかった課題について書きました。

解錠パスワードの問題です。

私たちのスペースは、部屋ごとに入室方法が異なります。これまでは解錠番号を定期的に更新し、その都度お客様に通知していました。

ただ、本当の課題は通知ではありませんでした。

当日、解錠パスワードの入れ方が分からない。 この物理的なトラブルが、時々起きるのです。そのたびに電話で説明することになります。

特に、年齢層が高いお客様にこの傾向がありました。機器の操作性が悪いというより、機械に対する心理的な抵抗が原因ではないかと推測しています。

だとすれば、通知の仕組みをどれだけ磨いても解決しません。

課題を解決するのではなく、課題そのものを消す。 そのために取り組んだのが、今回のSwitchBot連携です。


なぜSwitchBotだったのか

スマートロックは、他にもいくつも選択肢があります。

その中でSwitchBotを選んだ理由は、まず物理的なものでした。

鍵の形状が、さまざまなパターンに対応している。

これが最大の理由です。レンタルスペースは、もともと別の用途だった物件を使っていることが多く、扉も鍵も施設ごとにバラバラです。「うちの鍵には付けられませんでした」では話になりません。

どれだけシステム側が優秀でも、扉に付かなければゼロです。

そしてもうひとつ、鍵だけでなく、さまざまなデバイスに広げられるという点も大きな理由でした。

実際、私たちはすでにSwitchBotシリーズの他の製品も使っています。

アルベホール名古屋では、同じSwitchBotシリーズの防犯カメラが活躍しています。

東別院の施設では、入退室で不正が起きないよう、入り口に人感センサー付きのSwitchBotカメラを設置しています。

このように横展開できる強みがあったことが、SwitchBotを選んだ決め手になりました。

調べていくと、SwitchBotはさまざまなAPIを持っていることも分かりました。かなり柔軟な対応ができることが見えてきたので、採用を決めました。


解錠は、予約時間の5分前

では、どういう仕組みで動くのか。

解錠は、予約時間の5分前です。

お客様が到着される頃には、すでに鍵が開いています。

パスワードを送る必要がありません。入力していただく必要もありません。お客様は、ただ扉を開けて入るだけです。

これまで電話で説明していたトラブルは、そもそも発生しなくなります。

実は、こちらの悩みも解決しました

そしてもうひとつ、私たちがずっと悩まされてきた問題があります。

予約した時間よりずいぶん早く到着して、準備を始めてしまうお客様です。

空いているなら入ってもいいだろう、当然無料だろう。そう考えていらっしゃる方が、実際に少なくありません。

悪意があるわけではないので、こちらとしても指摘しづらい。その場にスタッフがいなければ気づけませんし、いたとしても言いにくい話です。

自動解錠にすると、この問題が説明せずに解決します。

5分前まで鍵が開かないので、早く来ても入れません。

ルールを伝えて守っていただくのではなく、そもそも成立しない形にした。誰も嫌な思いをせずに済みます。

そして、注意する私たちの側にもストレスがかかります。 言わなければ示しがつかない。でも言えば、その日の空気が悪くなる。どちらを選んでも後味が残ります。

それを回避できたことは、本当に大きいと思っています。

機械的に管理できるようになったことで、私たちも安心して毎日のオペレーションができるようになりました。

お客様のストレスも、私たちの手数も、同時に減りました。


難しかったのは、施錠のほうでした

一方で、頭を悩ませたのが施錠です。

理想を言えば、お客様が完全に退出してから閉めたい。

しかし、これを正確に判定するのは、なかなか難しい。まだ室内にいらっしゃるのに施錠してしまっては、話になりません。

そこで、施設の性格ごとに条件を分けることにしました。

営業時間のある施設

営業時間が決まっている施設については、営業終了時刻から一定時間後に施錠する形にしました。

たとえば最終22時までの施設であれば、22時30分に施錠します。

24時間利用できるスペース

問題は、24時間使えるスペースです。ここには「営業終了」という基準がありません。最終利用者が出た後という判定も成立しません。

そこで、まったく別の考え方にしました。

鍵を開けてから1時間後に、必ず施錠する。

利用時間とは連動させていません。解錠からの経過時間だけで切ります。

この方式だと、利用者は出入りのたびに鍵を開ける必要があるかもしれません。 少し手間をおかけすることになります。

それでも、確実に施錠されるほうを選びました。開けっ放しのリスクをゼロにできるからです。

前回書いた考え方と、同じです。人は閉め忘れるものです。 気をつけていただくのではなく、勝手に閉まる形にしました。

施錠時刻は、スペースごとに設定できます

なお、施錠の時刻はスペースごとに自由に設定できるようにしています。

施設によって営業時間も使われ方も違うので、ここは共通にできませんでした。


全スペースには入れません

ひとつ書いておくと、SwitchBotの機能をすべてのスペースに設置する予定はありません。

対象は、スタッフが常駐していない施設が中心です。

人がいる施設であれば、その場で対応できます。無理に自動化する必要はありません。

そして予約システム側も、スペースごとに対応を分けられる仕組みにしています。全部を同じにしない、という設計です。


一番怖かったのは「開かない」ことでした

この連携は、決済と同じくらい慎重に進めました。ミスが許されないオペレーションだからです。

想定されるトラブルは、いくつかあります。鍵が開かない。鍵が閉まらない。通信が切れる。

この中で、私が最も警戒したのは「開かない」ことでした。

理由は、緊急度がまったく違うからです。

閉まらないのは、後で何とでもできます。 気づいた時点で対応すればいい。もちろん放置はできませんが、時間的な猶予はあります。

しかし、開かないのは即座に困ります。

お客様は時間どおりに来られます。そしてその時間から、すでに料金が発生しています。入れなければ、その場で電話がかかってきて、誰かが駆けつけることになる。

無人運営のために入れた仕組みが、逆に人を呼ぶことになってしまいます。

だから、納得がいくまで何度もテストを繰り返し、調整してから設置しました。

決済のときと同じです。実害が直接出る領域では、慎重さの質を変える必要がありました。


予約システムが、外とつながりました

こうして振り返ると、今回の連携には別の意味もあったと思っています。

予約システムが、自分のサーバーの中で完結するものではなくなりました。

第5話で「決済は借りてくるものだと思い込んでいた」と書きました。第6話では「Googleカレンダーの同期も難しいと思い込んでいた」と書きました。

鍵も、同じでした。

予約に合わせて自動で鍵が開くなんて、大がかりなシステムが必要なのだろうと思っていました。実際にやってみると、つなげられるものは、つながるのです。

予約情報は、すでに手元にあります。誰が、いつ、どの部屋を使うのか。その情報を、画面の外にも届けるだけの話でした。


次回:#12 最終回

次回で、このシリーズは最終回です。

2週間で何ができて、何ができなかったのか。ノンプログラマーがAIとシステムを作るということは、実際のところどういうことだったのか。

そして、これを読んでいるあなたが同じことをできるのかどうかについて、正直に書こうと思います。


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