
レンタルスペースは、写真で選ばれます。
お客様は実物を見ずに決めます。内見に来る方もいますが、多くはウェブ上の写真だけで判断します。
つまり写真は、施設の紹介ではありません。商品そのものです。
今回は、私たちが10年間続けてきた写真の考え方を書きます。
結論を先に書くと、きれいに撮ることを目指していません。
ポータルの社長が、突然見に来た話
写真を重要視するようになったきっかけがあります。
レンタルスペース事業を始めて、まだ間もない頃の話です。
当時、あるレンタルスペースのポータルサイトがありました。今はもう運営されていないので、名前は伏せます。
そこの社長さんが、わざわざ私たちの施設を見に来ました。
理由は、なぜか私たちのスペースだけアクセス数が多いことに気づいたからだそうです。たくさんの施設を預かっている立場として、その理由を確かめたかったのだと思います。
そして、ひととおり見て、納得して帰られました。
言い残した一言
そのとき、こう言われました。
「写真と現実が、ほとんど一緒だね」
褒め言葉としては、少し変わっています。きれいに撮れているとは言っていません。 一致していることを評価されたのです。
多くの施設を見ている方だからこそ、気づけた視点だと思います。
裏を返せば、大半の施設は、写真と現実が違うということです。
期待を上げすぎると、落差が生まれます
なぜ一致が大事なのか。私自身の体験で説明します。
家族で旅行に行ったときのことです。
その旅館の写真は古くて、あまり素敵な客室とは思えませんでした。
ただ、そこにこう書いてあったのです。
部屋は古くて申し訳ないですが、料理はどこの旅館にも負けません。
実際に行ってみると
本当に客室は古かったです。
でも、がっかりはしませんでした。逆に、正直すぎて納得できました。
そしてもちろん、料理はとても美味しかった。
何が起きているのか
この旅館は、期待値を正確に伝えていました。
低く見せているのではありません。正確に見せたうえで、強みだけを明言している。
もしここで客室をきれいに撮って載せていたら、どうなっていたか。行った瞬間にがっかりして、その後の料理まで割り引いて評価されていたはずです。
期待度が高すぎる状態だと、少しでもイメージと違ったときに、急激にお客様のテンションが下がります。
だから私たちは、リアルをちゃんと映し出す写真が必要だと考えて、撮影し、掲載しています。
撮影のときに伝えていること
では、具体的にどうしているか。
カメラマンにお願いするときに伝えているのは、素直に、見た目と近く撮ってもらいたいということです。
具体的には、次の3つです。
- 広くしすぎない
- 明るくしすぎない
- 写真に嘘がない
この状態で撮ってほしい、とお願いしています。
なぜ、わざわざ伝える必要があるのか
ここが大事なところです。
カメラマンに任せると、普通はきれいに撮ろうとします。
広角で広く見せる。光を足して明るくする。印象的な構図にする。それがプロの仕事だからです。
だから、こちらから「盛らないでほしい」と伝える必要があります。
背景を、つまりこちらの事情をきちんと伝えると、カメラマンはそれに合った写真を撮って提供してくれます。
頼めば解決する話ではありません。何を求めているのかを言語化して渡す。 これが依頼側の仕事です。
写真は、1枚では足りません
もうひとつ、枚数の話をします。
複数の候補から最終的に絞り込まれるレンタルスペースは、写真やビジュアルの点数が多いと思います。
考えてみてください。
場所をここにしようと考えているお客様にとって、たった1枚の写真から決定するのは不安です。
映っていない部分がどうなっているのか分からない。天井は。入口は。設備は。
さまざまな角度で撮った写真やイメージ、さらには360°VRなど、複数の情報があって初めて、競合を押しのけることができると考えています。
だから、何十カットも撮ります
私たちは、一つの施設の撮影に対して、何十カットも撮るようにしています。
多く撮って、多く出す。お客様が判断するための材料を、できるだけ揃えます。
360°VRも追加しました
最近は、360°VRも追加しています。
これは正直に見せるという方針を、さらに徹底したものです。
写真は切り取りである以上、どこを写すかという選択が入ります。 意図せず、都合の良い部分だけを見せてしまうこともある。
VRなら、そもそも隠せません。
お客様の理解度を、さらに上げることができます。
そして、1枚だけ選びます
たくさん撮ったうえで、その中から1枚を選びます。
私たちが「キラーショット」と呼んでいるものです。
お客様の印象に深く残るような、その施設を象徴している写真。 それを1枚選んで、ずっと使い続けます。
なぜ固定するのか
理由があります。
さまざまな媒体を見ても、同じ施設・スペースであるとお客様に認識してもらえるからです。
公式サイト、ポータルサイト、Googleビジネスプロフィール、各種の紹介ページ。お客様は複数の場所で施設を目にします。
そのたびに違う写真が出てくると、同じ場所だと気づいてもらえません。
同じ1枚が出続けるから、記憶に定着します。
役割が、違います
たくさんの写真と、1枚のキラーショット。一見すると矛盾しますが、役割が違います。
- たくさんの写真 — 判断してもらうため
- 1枚のキラーショット — 覚えてもらうため
どちらも必要です。
なお、Googleビジネスプロフィールの回で、住所や電話番号の表記を全媒体で統一した話を書きました。発想は同じです。 媒体をまたいで揃えることで、同じものだと認識してもらう。
加工できる時代だからこそ
最後に、今の話を書きます。
今はAIなども駆使して、加工もできる時代です。
広く見せることも、明るくすることも、存在しないものを足すことさえ簡単にできます。
だからこそ逆に、お客様の期待を裏切るようなことになってしまわないよう、注意が必要だと思います。
盛れる時代だから、盛らない判断に意味が出ます。
あのポータルの社長さんが言った「写真と現実が、ほとんど一緒だね」という言葉は、10年経った今のほうが重いのかもしれません。
写真は、来ていただくための道具ではありません。 来たあとに納得していただくための、最初の約束です。
シリーズ一覧|選ばれるレンタルスペースの作り方(全10回)
- #1 10年やってきて、大切にしてきた3つのこと
- #2 売れる施設の特徴3選と、半年で閉じた施設の話
- #3 料金設定|平米単価から逆算する方法
- #4 写真に、嘘がないこと(この記事)
- #5 Googleビジネスプロフィールは、小規模事業者が戦える場所
- #6 レンタルスペースは、料理を美しく見せる器です
- #7 自動返信メールを、もっと働かせる
- #8 清潔感は、目ではなく肌で判断されている
- #9 リピーターは、値引きでは増えません
- #10 パーティーを、受けないことにしました
あわせて読みたい|レンタルスペースの始め方
これから始める方向けの連載です。物件選び、資金、消防法、撤退ラインまで全13回。
【筆者】
レンタルスペースALBE 運営会社 株式会社ファーストクリエイト 代表取締役 鬼頭創一