【選ばれるレンタルスペースの作り方 #4】写真に、嘘がないこと

事業者の方へ

レンタルスペースは、写真で選ばれます。

お客様は実物を見ずに決めます。内見に来る方もいますが、多くはウェブ上の写真だけで判断します。

つまり写真は、施設の紹介ではありません。商品そのものです。

今回は、私たちが10年間続けてきた写真の考え方を書きます。

結論を先に書くと、きれいに撮ることを目指していません。


ポータルの社長が、突然見に来た話

写真を重要視するようになったきっかけがあります。

レンタルスペース事業を始めて、まだ間もない頃の話です。

当時、あるレンタルスペースのポータルサイトがありました。今はもう運営されていないので、名前は伏せます。

そこの社長さんが、わざわざ私たちの施設を見に来ました。

理由は、なぜか私たちのスペースだけアクセス数が多いことに気づいたからだそうです。たくさんの施設を預かっている立場として、その理由を確かめたかったのだと思います。

そして、ひととおり見て、納得して帰られました。

言い残した一言

そのとき、こう言われました。

「写真と現実が、ほとんど一緒だね」

褒め言葉としては、少し変わっています。きれいに撮れているとは言っていません。 一致していることを評価されたのです。

多くの施設を見ている方だからこそ、気づけた視点だと思います。

裏を返せば、大半の施設は、写真と現実が違うということです。


期待を上げすぎると、落差が生まれます

なぜ一致が大事なのか。私自身の体験で説明します。

家族で旅行に行ったときのことです。

その旅館の写真は古くて、あまり素敵な客室とは思えませんでした。

ただ、そこにこう書いてあったのです。

部屋は古くて申し訳ないですが、料理はどこの旅館にも負けません。

実際に行ってみると

本当に客室は古かったです。

でも、がっかりはしませんでした。逆に、正直すぎて納得できました。

そしてもちろん、料理はとても美味しかった。

何が起きているのか

この旅館は、期待値を正確に伝えていました。

低く見せているのではありません。正確に見せたうえで、強みだけを明言している。

もしここで客室をきれいに撮って載せていたら、どうなっていたか。行った瞬間にがっかりして、その後の料理まで割り引いて評価されていたはずです。

期待度が高すぎる状態だと、少しでもイメージと違ったときに、急激にお客様のテンションが下がります。

だから私たちは、リアルをちゃんと映し出す写真が必要だと考えて、撮影し、掲載しています。


撮影のときに伝えていること

では、具体的にどうしているか。

カメラマンにお願いするときに伝えているのは、素直に、見た目と近く撮ってもらいたいということです。

具体的には、次の3つです。

  1. 広くしすぎない
  2. 明るくしすぎない
  3. 写真に嘘がない

この状態で撮ってほしい、とお願いしています。

なぜ、わざわざ伝える必要があるのか

ここが大事なところです。

カメラマンに任せると、普通はきれいに撮ろうとします。

広角で広く見せる。光を足して明るくする。印象的な構図にする。それがプロの仕事だからです。

だから、こちらから「盛らないでほしい」と伝える必要があります。

背景を、つまりこちらの事情をきちんと伝えると、カメラマンはそれに合った写真を撮って提供してくれます。

頼めば解決する話ではありません。何を求めているのかを言語化して渡す。 これが依頼側の仕事です。


写真は、1枚では足りません

もうひとつ、枚数の話をします。

複数の候補から最終的に絞り込まれるレンタルスペースは、写真やビジュアルの点数が多いと思います。

考えてみてください。

場所をここにしようと考えているお客様にとって、たった1枚の写真から決定するのは不安です。

映っていない部分がどうなっているのか分からない。天井は。入口は。設備は。

さまざまな角度で撮った写真やイメージ、さらには360°VRなど、複数の情報があって初めて、競合を押しのけることができると考えています。

だから、何十カットも撮ります

私たちは、一つの施設の撮影に対して、何十カットも撮るようにしています。

多く撮って、多く出す。お客様が判断するための材料を、できるだけ揃えます。

360°VRも追加しました

最近は、360°VRも追加しています。

これは正直に見せるという方針を、さらに徹底したものです。

写真は切り取りである以上、どこを写すかという選択が入ります。 意図せず、都合の良い部分だけを見せてしまうこともある。

VRなら、そもそも隠せません。

お客様の理解度を、さらに上げることができます。


そして、1枚だけ選びます

たくさん撮ったうえで、その中から1枚を選びます。

私たちが「キラーショット」と呼んでいるものです。

お客様の印象に深く残るような、その施設を象徴している写真。 それを1枚選んで、ずっと使い続けます。

なぜ固定するのか

理由があります。

さまざまな媒体を見ても、同じ施設・スペースであるとお客様に認識してもらえるからです。

公式サイト、ポータルサイト、Googleビジネスプロフィール、各種の紹介ページ。お客様は複数の場所で施設を目にします。

そのたびに違う写真が出てくると、同じ場所だと気づいてもらえません。

同じ1枚が出続けるから、記憶に定着します。

役割が、違います

たくさんの写真と、1枚のキラーショット。一見すると矛盾しますが、役割が違います。

どちらも必要です。

なお、Googleビジネスプロフィールの回で、住所や電話番号の表記を全媒体で統一した話を書きました。発想は同じです。 媒体をまたいで揃えることで、同じものだと認識してもらう。


加工できる時代だからこそ

最後に、今の話を書きます。

今はAIなども駆使して、加工もできる時代です。

広く見せることも、明るくすることも、存在しないものを足すことさえ簡単にできます。

だからこそ逆に、お客様の期待を裏切るようなことになってしまわないよう、注意が必要だと思います。

盛れる時代だから、盛らない判断に意味が出ます。

あのポータルの社長さんが言った「写真と現実が、ほとんど一緒だね」という言葉は、10年経った今のほうが重いのかもしれません。

写真は、来ていただくための道具ではありません。 来たあとに納得していただくための、最初の約束です。


シリーズ一覧|選ばれるレンタルスペースの作り方(全10回)

あわせて読みたい|レンタルスペースの始め方

これから始める方向けの連載です。物件選び、資金、消防法、撤退ラインまで全13回。


【筆者】

レンタルスペースALBE 運営会社 株式会社ファーストクリエイト 代表取締役 鬼頭創一

関連記事