
レンタルスペースの運営で、すぐにできて、効果が出やすい改善があります。
自動返信メールです。
問い合わせフォームに設定してある、あの短い文面のことです。
お問い合わせありがとうございます。担当者より折り返しご連絡いたします。
多くの施設が、このくらいの内容で止まっているのではないでしょうか。私たちも、かつてはそうでした。
これは、もったいない。
自動返信メールは、お客様に最も早く届くメッセージです。ここをきちんと働かせるだけで、問い合わせの数が減り、予約の決定率が上がります。
今回は、その考え方と具体的な中身を書きます。
問い合わせは、最終判断の直前に来ている
まず、お客様の側から見てみます。
スペースを探している方は、だいたい3つくらいまで候補を絞り込んでいます。 そのうえで、気になる施設に補足の質問をしてきます。
ここで大事なことがあります。
インターネットの世界で「質問する」というアクションは、非常に重い作業です。
文章を書かなければいけません。返事を待たなければいけません。面倒です。それでもあえて聞いてくるということは、かなり熱い状態にあるということです。
ご自身の経験を思い返してみてください。ネットで問い合わせをするのは、たいてい最終ジャッジの段階ではないでしょうか。
まさにその状態のお客様が、こちらに連絡をくださっているわけです。
このタイミングを逃してはいけません。
遅れた返信は、届いた時点で手遅れです
ところが、そこに返るのが定型の一文だとどうなるか。
お問い合わせありがとうございます。担当者より折り返しご連絡いたします。
そして実際の返事は翌日以降になります。
その頃には、他社のスペースで決まっているかもしれません。
私たちは、問い合わせへのレスポンスを24時間以内と定めて運用しています。ただ、創業当初はそんな人員配置は無理でした。全部自分でやっていました。「◯月◯日空いてますか」「◯◯のオプションはありますか」といった質問に、夜中でも返していました。
正直に言えば、ネットに書いてあるのに、と思ったこともあります。
でも、続きません。人を増やすか、仕組みを変えるかしかない。
そこで手をつけたのが、自動返信メールでした。
自動返信に、何を書くか
やることは単純です。聞かれる前に、答えを置いておく。
具体的には次の3つです。
1. よくある質問を、5つほど簡潔に載せる
頻繁に聞かれる内容を、上位5つくらい選んで、自動返信の本文に直接書いてしまいます。
料金、オプション、キャンセル、駐車場、搬入。施設によって違うと思いますが、毎回同じことを聞かれている項目が必ずあるはずです。
2. Q&Aページへのリンクを置く
公式サイトからの問い合わせであれば、Q&Aページへ誘導するリンクを設置します。
本文に全部書ききれない部分は、ここで引き受けます。
3. ポータル経由では、本文に仕込む
スペースマーケットさんのように、メッセージ上にURLを設置できないケースがあります。
その場合は、料金やオプションなど頻度の高い質問への回答を、あらかじめ返信本文に仕込んでおきます。 リンクが使えないなら、本文で完結させるしかありません。
長くなっても構いません
自動返信メールは短くまとめるもの、という感覚があるかもしれません。
私は、多少長い文章になっても良いと思っています。
理由は単純で、お客様は答えを知りたいからです。
質問した直後に、その場で疑問が解決するかもしれない。 そうなれば、返事を待たずに、そのまま予約申し込みにつながります。
丁寧に短くまとめた一文より、答えが書いてある長い文面のほうが、この場面では役に立ちます。
そして、これは今すぐできる改善です。設備投資も、システム改修も要りません。文面を書き換えるだけです。
約束は24時間、実態はそれより早く
もうひとつ、運用の話を書いておきます。
レスポンスの速さを掲げるとき、宣言と実態はずらしておくことをおすすめします。
私たちは対外的に24時間以内と案内していますが、実際にはもっと早く返しています。
理由は2つあります。
ひとつは、守れない約束をしないためです。速さを公約にして一度でも遅れると、そこで信用を落とします。
もうひとつは、期待を上回れるためです。24時間と言われていて半日で返ってくれば、それだけで印象が変わります。
速さを謳うなら、余裕を持って宣言して、必ず上回る。ホテル時代から変わらない考え方です。
その後、自動返信はシステムになりました
ここからは、今の話です。
私たちは2026年に、予約システムを自社で開発しました。 メールのテンプレートは50種類以上あります。
そこで何をしたかというと、当時やろうとしていたことを、そのまま突き詰めました。
FAQをしっかり作り込み、自動返信の内容もバージョンアップしました。文面を手で書き換えていた頃とは、できることの幅が違います。昔の経験を、システムとして実装できたという感覚があります。
そして、結果として起きたことがあります。
問い合わせそのものが、明らかに減りました。
答えを先回りして置けば、聞かれなくなる
これは、自動返信に限った話ではありません。
私たちは予約システムを作るときに、空き状況を確認できるページも用意しました。すると「◯月◯日の◯時、空いていますか」という電話が、ぱたりと止まりました。
自動返信を厚くするのも、FAQを整えるのも、空き状況を見せるのも、やっていることは同じです。
聞かれる前に、答えを置いておく。
それだけで、問い合わせは減ります。そしてお客様は、待たずに決められます。
減った時間を、何に使うか
最後に、一番書きたかったことを書きます。
問い合わせを減らすことは、目的ではありません。
私たちは以前から、対応をできるだけ早くすることを意識してきました。ただ、追われている状態では、対応の質は上がりません。 早く返すことで精一杯になります。
問い合わせが減って、まず変わったのはスタッフの疲弊でした。
そして、そのぶんをお客様の来場時の対応に向けられるようになりました。
メールの前に座っている時間が減って、目の前のお客様に使える時間が増えた。これが一番の変化です。
自動返信メールを厚くするのは、楽をするためではありません。本当に人が必要な場面に、人を回すためです。
まずは文面の書き換えから。それだけでも、変わります。
シリーズ一覧|選ばれるレンタルスペースの作り方(全10回)
- #1 10年やってきて、大切にしてきた3つのこと
- #2 売れる施設の特徴3選と、半年で閉じた施設の話
- #3 料金設定|平米単価から逆算する方法
- #4 写真に、嘘がないこと
- #5 Googleビジネスプロフィールは、小規模事業者が戦える場所
- #6 レンタルスペースは、料理を美しく見せる器です
- #7 自動返信メールを、もっと働かせる(この記事)
- #8 清潔感は、目ではなく肌で判断されている
- #9 リピーターは、値引きでは増えません
- #10 パーティーを、受けないことにしました
あわせて読みたい|レンタルスペースの始め方
これから始める方向けの連載です。物件選び、資金、消防法、撤退ラインまで全13回。
【筆者】
レンタルスペースALBE 運営会社 株式会社ファーストクリエイト 代表取締役 鬼頭創一