【選ばれるレンタルスペースの作り方 #3】料金設定|平米単価から逆算する方法を公開します

事業者の方へ

レンタルスペースの運営で、最初につまずくのが料金です。

いくらに設定すればいいのか。高すぎれば埋まらず、安すぎれば体力が続かない。それでいて、業界に決まった基準があるわけでもありません。

多くの方が、ご自身の感覚で決めているのではないでしょうか。

近くのスペースを2〜3軒見て、だいたいこのくらいかな、と。私たちも最初はそうでした。

ただ、この決め方には弱点があります。

根拠がないので、説明できないのです。

お客様から値引きの交渉があったとき、なぜその金額なのかを答えられない。答えられないから、押し切られる。結果として、下げなくてもよかった案件まで下げることになります。

私たちは今、平米単価から逆算する方法で料金を決めています。10年運営してきて、この手法にたどり着きました。

今回は、その手順をそのまま公開します。


なぜ「平米」なのか

先に、考え方の土台を書きます。

この手法は私が独自に編み出したものではありません。ホテル時代に、教育プログラムの一つとして学んだものです。 一般的にも広く知られている考え方だと思います。

ホテルというビジネスは、常に競合が隣同士にいます。ランクの違いはありますが、「泊まる」という行動そのものは全社共通です。

その中で、お客様が比較するのは何か。内装であったり、サービスであったりします。

しかし、ここが重要です。

内装もサービスも、絶対的に固定されたものではありません。

良し悪しは人によって感じ方が違いますし、こちらの努力でも変わります。つまり、物差しにならないのです。

では、唯一固定されているものは何か。

部屋の広さです。

数字で出ますし、誰が見ても同じ値です。改装しても、接客を磨いても、10㎡の部屋は10㎡のままです。

同じ規格があるからこそ、正しい競合比較ができる。

この考え方は、レンタルスペースにもそのまま当てはまります。写真の見栄えも設備の充実度も比較が難しいですが、広さだけは数字で並べられます。


手順1|競合をExcelに書き出す

やり方は単純です。

自分が持っているスペースと同等のスペースを、ネットで探します。ポータルサイトでも、各社の公式サイトでも構いません。

見つけたら、Excelに書き出していきます。

この段階では、まだ何も見えません。どのスペースも本当にバラバラの料金です。同じくらいの広さなのに倍近く違う、ということも普通にあります。

これでは基準が見えません。


手順2|平均値を、2回出す

ここからが本題です。

まず、料金の平均値

書き出したスペースの料金を平均します。これで、そのエリアでいくらくらいで売られているのかが見えます。

次に、広さの平均値

同じように、広さも平均します。

この2つを出すことで、自分がターゲットにしているエリアの平均像が見えてきます。

個々の競合と1対1で比べるのではありません。エリアの平均を一度つくってから、そこに自分を当てるという順番です。


手順3|平米単価を出して、自分の面積を掛ける

料金の平均値を、広さの平均値で割ります。

これで、そのエリアの1平米あたりの単価が出ます。

あとは簡単です。

1平米あたりの単価 × 自分のスペースの広さ

これで、自分のスペースが「エリアの平均でいくらになるか」が計算できます。

そして、平均値より少し低めに設定します。

こうすることで、競争力のある料金になります。


ただし、これだけでは危険です

ここまでは、あくまで市場が決めた金額です。

外から見た相場に自分を合わせただけなので、自社の事情が一切入っていません。

内装にいくらかけたのか。設備に何を入れたのか。それをどれくらいの期間で回収するつもりなのか。

ここが抜けたまま料金を決めると、売れても残らない、ということが起こります。

そこで、もう一段の計算をします。


手順4|投資の回収分を、単価に乗せる

「自分はこれぐらいの単価で売りたい」という思いを乗せる、と言うと感覚論に聞こえるかもしれません。

ですが、ここも計算です。

やることは3つです。

  1. 設備投資にかかった金額を出す
  2. それを何年で回収するか、目標を立てる
  3. どれくらいの稼働率を見込むか、予測を立てる

あとは割り算です。投資額を回収年数で割り、想定稼働で割る。それを日割もしくは月割にして、平米単価から出した金額の上に乗せます。

特殊な方法ではありません。当たり前の計算式を使っているだけです。

ただ、この一手間があるかないかで、料金の性格が変わります。感覚で決めた「なんとなくの希望」ではなく、期限のある約束を数字にしたものになるからです。


想定稼働率は、どうやって出すのか

ここで多くの方がつまずきます。開業前のスペースには、実績がないからです。

私たちは、競合の稼働状況を見て決めています。

同一エリアの似たような競合スペースは、ポータルサイトや公式サイトで空き状況が公開されています。 予約カレンダーを見れば、どのくらい埋まっているかはおおよそ分かります。

ここから想定稼働率を導き出して、計算に使います。

競合がいない場合

この手法が成立しない場合もあります。近くに同等のスペースが存在しないケースです。

そのときは、東京都内の状況を同じようにトレースします。

東京は激戦区です。同等のレンタルスペースがいくらでもあります。まずはそこを参考にします。

ただし、東京の数字をそのまま使うわけにはいきません。 自分のエリアが東京と似ても似つかないことは、当然あります。

ここからは少し感覚が入ります。

私たちは名古屋なので、東京より稼働率を20〜30%低めに設定します。そうやって自分のエリアの想定値を作ります。

正確な方法だとは言いません。ただ、何も根拠がないまま数字を置くよりは、はるかにましです。


平米単価は「基本」でしかない

ここまでが計算の話です。

ただ、平米単価から料金を導き出すことは、あくまで基本です。骨格に過ぎません。

そこにどういうエッセンスを付け加えるかは、事業者それぞれ異なると思っています。

たとえば、客層で変える

利用する人たちのターゲット層も、判断材料に入れておかないと失敗します。

分かりやすいのが、ダンスやヨガのレッスンで使われるスペースです。

こうしたお客様は、個人でレッスンを開いて生徒を集めています。 つまり、お客様のほうも商売です。

そうなると、スペース代はお客様にとっての原価になります。生徒から集めた月謝から支払うわけですから、単価が高ければ単純に採算が合わない。できるだけ低く設定しないと、来てくれません。

パーティーや撮影のような一回限りの利用とは、料金の受け止め方がまったく違います。

客層やターゲットに応じた柔軟な料金設定も、考える必要があります。


根拠のある料金は、値引きに強い

最後に、この手法の本当の効き目について書きます。

料金を計算で出すことの価値は、適正な金額が分かることだけではありません。

説明できるようになることです。

感覚で決めた料金には、説得力がありません。競合と比較されたとき、なぜその金額なのかを答えられない。

しかし、平米単価から組み立てた料金なら違います。

お客様から値引きの交渉があったとき、競合相手が明確であるならば、この平米単価での説明ができます。

「このエリアの相場は1平米あたりこのくらいで、うちの面積はこれだけあります」

この説明は、お客様にとっても納得できるものです。無理に値引きを提供しなくても済む場合があります。

値引きを断ることが目的ではありません。根拠を持っていれば、下げるべきでない案件まで下げずに済むということです。


まとめ

もう一度、順番を整理します。

  1. 競合をExcelに書き出す(料金・広さ・アクセス)
  2. 料金の平均値と、広さの平均値を出す
  3. 平米単価を割り出し、自分の面積を掛ける
  4. 平均より少し低めに置く
  5. 設備投資の回収分を計算して乗せる
  6. 客層に応じて調整する

ここまでやって、ようやく料金が決まります。

面倒に見えるかもしれません。ですが、一度作ってしまえば、以後の判断がすべて速くなります。新しいスペースを立ち上げるときも、値上げを検討するときも、同じ計算に戻ればいい。

感覚で決めた料金は、感覚でしか守れません。

これから料金を決める方の、参考になれば幸いです。


運営者向けの記事


シリーズ一覧|選ばれるレンタルスペースの作り方(全10回)

あわせて読みたい|レンタルスペースの始め方

これから始める方向けの連載です。物件選び、資金、消防法、撤退ラインまで全13回。


【筆者】

レンタルスペースALBE 運営会社 株式会社ファーストクリエイト 代表取締役 鬼頭創一

関連記事