【選ばれるレンタルスペースの作り方 #9】リピーターは、値引きでは増えません

事業者の方へ

レンタルスペースの売上を安定させるうえで、リピーターの存在は決定的です。

新規のお客様を集め続けるには、広告も、SEOも、写真の更新も要ります。コストも手間もかかります。

一方でリピーターは、一度満足していただければ、次から探す手間そのものがなくなります。

人は、満足した体験があると、理由もなく新しい施設に乗り換えることを面倒に感じます。これは自分に置き換えても分かると思います。

では、どうすればリピートしていただけるのか。

私たちが重視しているのは3つです。

  1. 清潔感
  2. サービス対応力
  3. オプションによる特別感

清潔感については前回の記事で書きました。今回は残りの2つ、特に3つ目を掘り下げます。

ここには、値引きに頼らずリピーターをつなぎとめる考え方があります。


サービス対応力とは、接点のこと

最大のリピート要因は何かと問われれば、お客様とのコミュニケーションだと答えます。

ただし、ここで言うコミュニケーションは、対面で話をすることだけではありません。

メールも、ときには電話も。お客様との接点そのものを、サービス対応力の一つと考えています。

これは、私たちにとって重要な定義です。

というのも、弊社のスペースにはスタッフが常駐していない施設も多くあります。 現地に人はいません。

それでも接点は作れます。むしろ、人が立っていない分だけ、接点を意識して設計する必要があります。


一番大事なのは、早く解決すること

接点の質を決めるものは何か。

できるだけ早く、お客様の問題を解決することだと思っています。

そのために心がけているのが、まず一本、返事を送ることです。

「受け取りました」だけでも、送る

メールをいただいたとき、翌日や翌々日に完璧な回答を返すのではありません。

まずこう返します。

お問い合わせを承りました。現在、営業担当が席を外しておりますので、夕方ぐらいにはお返事できると思います。

これだけです。答えは何も書いていません。

それでも、お客様に安心感をお届けできます。

待つ時間が分かれば、人は待てる

なぜこれが効くのか。

不安なのは、待たされることではありません。いつ返ってくるか分からないことです。

「夕方には返ります」と分かっていれば、その間に他の作業ができます。他社に問い合わせ直す必要もありません。

逆に、何も返ってこない時間が続くと、お客様はこの施設は反応が遅いのではないかと考え始めます。そして、返信が届く頃には他で決まっている。

一本の短い返信が、それを防ぎます。


返答の質を、どう揃えるか

スタッフが複数いると、必ず問題が出てきます。

人によって答えが違うのです。

同じ質問なのに、Aさんは「できます」と答え、Bさんは「確認します」と答える。お客様は迷いますし、信用も落ちます。

私たちがやっているのは、次の2つです。

1. FAQを、社内の回答基準にする

私たちは、社内でもFAQを重要視しています。

ウェブサイト上のFAQを常に最新の状態に保ち、スタッフも返事に困ったときは、まずFAQを見てからお客様に返答するようにしています。

これで何が防げるか。

属人化と、ミスインフォメーションです。

誰が答えても同じ内容になりますし、「あの人しか分からない」という状態も生まれません。

そして、この仕組みには二重管理が発生しないという利点があります。

お客様が自分で調べるFAQと、スタッフが参照するFAQが同じものだからです。一つ更新すれば、両方に効きます。

2. 返信は、代表アドレスにBCCを入れる

もうひとつは、とても単純な運用です。

メールの返事は、必ずBCCに代表のメールアドレスを付けて返信します。

メールはスタッフ全員が見られる環境にあるので、ほぼ電話と同じようなレスポンスで返事ができる体制になっています。ただしその分、別々の担当が同時に返信してしまう危険があります。

BCCを入れておけば、誰かがすでに返したことが全員に分かります。

二重返信も防げますし、逆に「誰かが返しただろう」と全員が思い込んで放置される事故も防げます。

新しいツールは要りません。メールだけで完結します。


ここからが本題|値引きを求められたとき

リピーターの方や定期利用の方からは、料金交渉が入ることがよくあります。

長く使っているのだから少し安くならないか。回数をまとめるから割引してほしい。よくある話だと思います。

ここでの判断が、あとあと効いてきます。

一度下げた金額は、上げられません

私たちは、料金交渉に安易に応じません。

理由は単純です。

金額は、一度下げると上げることがなかなか難しくなります。

次回から元の料金に戻そうとすれば、値上げしたように受け取られます。結果として、そのお客様には下げた単価が固定されます。そして同じことが他のお客様にも広がれば、施設全体の単価が下がっていきます。

売れる施設の特徴について書いた回で、私たちが半年でクローズした施設の話を書きました。敗因はディスカウントでした。 埋まらないから下げる、下げても埋まらない、キャッシュが尽きる。

値引きには、それだけの威力があります。


代わりに、オプションを対価として提案する

では、交渉に何も応じないのか。そうではありません。

その利用者さんが必要とするオプションを、対価として提案します。

これは、ビジネスとして理にかなっていると考えています。

なぜオプションなら良いのか

オプションは、金額ベースを下げることにはなりません。

厳密に言えば、設備を用意する分の減価償却は発生します。数字上の負担はあります。

しかし決定的な違いがあります。

そのオプションアイテムは、他のお客様の利用でも収益化していけるのです。

一度用意すれば、以後ずっと貸し出せます。投資が、その一人に紐づきません。

値引きは、その場で消えます。オプションは、資産として残ります。

客層に合わせて、渡すものを変えます

ここが提案のポイントです。

大事なのは、そのお客様が実際に使うものを選ぶことです。

たとえば、ヨガやダンスなどレッスン系のお客様であれば、ヨガマットを無料にする。 毎回必ず使うものですから、そのまま価値になります。

会議や研修などビジネス系のお客様であれば、プロジェクターを無料にする。 こちらも使用頻度が高く、有料オプションとして案内している施設が多いので、割引と同等の満足度になります。

音響設備やスクリーンも、同じように対価として使えます。

選ぶ基準は「利用頻度の高いもの」です

共通しているのは、利用頻度が高いということ。

その人のためだけに買った特殊な機材は、その人が来なくなれば無駄になります。しかし誰もが使うものなら、交渉の対価として渡しても、他の利用で回収できます。

交渉に応じながら、単価も守り、設備も増える。三方が成立します。


リピートは、当たり前の積み重ねです

まとめます。

リピーターを増やすために、特別なことはしていません。

どれも派手さはありません。ただ、どれも毎回やり続けることが難しいものです。

一度の感動よりも、毎回変わらないことのほうが、リピートには効きます。

お客様が次も選んでくださるのは、前回と同じ状態がそこにあると分かっているからです。


シリーズ一覧|選ばれるレンタルスペースの作り方(全10回)

あわせて読みたい|レンタルスペースの始め方

これから始める方向けの連載です。物件選び、資金、消防法、撤退ラインまで全13回。


【筆者】

レンタルスペースALBE 運営会社 株式会社ファーストクリエイト 代表取締役 鬼頭創一

関連記事