
レンタルスペースを選ぶとき、お客様は何を見ているのか。
立地、広さ、料金、設備。どれも大事です。
ただ、実際に使ったあとで評価が分かれるのは、清潔感です。
そして清潔感は、写真では伝わりません。来て、触れて、はじめて分かります。だからリピートするかどうかを決めるのは、たいていここです。
私は前職がホテルマンで、客室清掃課に2年半いました。 今のレンタルスペースの清掃は、そこで教わったことをほぼそのまま持ち込んでいます。
今回は、その基準を公開します。
なぜ、営業志望で清掃課に行ったのか
先に経緯を書きます。
客室清掃課には、自ら志願して配属されました。
理由は単純です。宿泊部門の経験として、一番ベースになるところだからです。
部屋を売るのが営業の仕事ですが、その部屋がどう作られているかを知らないまま売るのは、どうなのか。そう思っていました。営業的にも非常に重要なセクションでしたし、ここを経験することが次のステップにつながると考えて、自分から手を挙げました。
2年半、大変厳しく指導していただきました。 今振り返っても、良い経験だったと思っています。
そしてこれは、レンタルスペースの運営ではさらに意味を持ちます。
私たちは、売る人と掃除する人が同じだからです。
最初に叩き込まれたのは、水回りでした
清掃課で最初に教わったのは、水回りです。
バスルーム、お手洗い、洗面台。清潔感が一番現れる場所だからです。
ここの清掃については、かなり厳しく指導されました。
「肌が触れるところ」は、特にクオリティを上げる
その中で、今も一番印象に残っている教えがあります。
手に触れる、肌が触れる。そういったところは、特に清掃のクオリティを高くするべきだ。
これを叩き込まれました。
考えてみれば当然です。清潔かどうかは、目ではなく肌で判断されています。
見た目がどれだけきれいでも、蛇口のレバーに触れた瞬間にぬめりがあれば、その部屋全体の印象が決まってしまいます。逆に、多少の生活感があっても、触れる場所が乾いてさらりとしていれば、不快には感じません。
そしてこの教えは、作業の優先順位にもなります。
時間は有限です。すべてを同じ力で磨くことはできません。どこに力を集中すべきかを教えてくれる基準として、今も使っています。
「前の利用者の痕跡を残さない」
もうひとつ、清掃課で教わった基準があります。
前の利用者の痕跡を残さない。
これが、私たちの清掃の中心にある考え方です。
髪の毛の話
分かりやすい例を挙げます。
皆さんも当たり前のようにホテルを利用されていると思いますが、バスルームに前の利用者の髪の毛がいっぱい落ちていたら、気持ち悪くないですか。
それと同じことです。
部屋そのものが古くても、設備が最新でなくても、前に誰かがいた形跡があるというだけで、印象は大きく損なわれます。
完全には、消せません
正直に書いておくと、完全に前の利用者の痕跡を消すことは難しいかもしれません。
短い時間で、複数の部屋を回ります。人間がやる作業ですから、見落としもあります。
それでも、できるだけ痕跡を消す。 これは重要なことだと思っています。
完璧を目指すのではなく、消すべきものを明確にして、そこに集中する。 これが現実的なやり方です。
「きれいにして」では、基準になりません
ここからは、現場の話です。
清掃を担当するのは、弊社のスタッフです。外注ではありません。
そして、複数人で回すときに必ず出てくる問題があります。
「きれい」の基準が、人によって違うのです。
同じ部屋を掃除しても、仕上がりが揃わない。指示した側は伝えたつもりでも、受け取る側の基準が違えば、同じにはなりません。
だから、渡す言葉を変えました
私たちがスタッフに伝えているのは、「前の利用者の痕跡を残さない」という一言です。
曖昧な基準を伝えるよりも、これを共有するほうが、清掃のクオリティは一定に保てます。
「きれいにしてください」では、判断のしようがありません。どこまでやればいいのか分からない。
しかし「痕跡を残さない」なら、何を見ればいいかが分かります。 髪の毛、指紋、飲み物の輪染み、使ったあとのゴミ。前に誰かがいたと分かるものを探せばいい。
細かいマニュアルを増やすのではなく、判断できる一言を渡す。 人が増えても品質が保てるのは、これがあるからだと思っています。
重点的に清掃している場所
具体的にどこを見ているか、書いておきます。
水回り
やはりここが最優先です。お手洗い、洗面台。清潔感が一番現れる場所という教えは、レンタルスペースでも変わりません。
給湯室やキッチン
飲食を伴う利用が多いので、ここも重点箇所です。シンク、蛇口、作業台。水回りであり、かつ肌が触れる場所でもあります。
椅子
意外に見落とされがちですが、椅子は最も長く肌が触れる場所です。座面と背もたれ。ここが汚れていると、利用中ずっと不快が続きます。
床面
そして床です。
レンタルスペースならではの落とし穴がここにあります。
特に広い部屋の場合、汚れやゴミがなかなか目立ちません。
ホテルの客室は狭いので、この問題は起きにくい。しかし数十平米ある部屋では、隅に落ちた小さなゴミは、立って見回しただけでは見えません。
目立たないから、見落とす。 だからこそ、必ずしっかり清掃するよう指導しています。
ホテル並みが必要か、と言えば
正直なことを書きます。
レンタルスペース事業の中で、果たしてここまでホテル並みの清掃クオリティが必要かというと、そこまでではないかもしれません。
宿泊するわけではありません。滞在も数時間です。論理的に考えれば、ホテルと同じ基準は過剰かもしれない。
それでも、目指すところを高く設定しています。
理由は、そうすることでお客様からグッドコメントをいただけるからです。
乗り換えてきたお客様が、教えてくれます
ときどき、こんな声をいただきます。
別のレンタルスペースを利用されていて、弊社に乗り換えられたお客様から、「レンタルスペースALBEさんのほうが清潔感がある」と言われることがあります。
これは、比較した方の言葉です。だから信用できます。
私たちが自分で「清潔です」と言うより、他を知っている人が言うことのほうが、はるかに意味があります。
特に、女性にとっては
そしてもうひとつ。
女性にとって、清潔感は非常に大きな選択肢の一つだと思っています。
レンタルスペースの利用では、女性が幹事や決裁者になる場面が多くあります。そこで清潔感が引っかかれば、候補から落ちます。
だから、これからも注力していきます。
まとめ
清掃について、私たちが持っている基準は2つだけです。
- 肌が触れるところは、特にクオリティを上げる
- 前の利用者の痕跡を残さない
どちらも、ホテルの客室清掃課で教わったことです。
そして、この2つがあれば現場で判断できます。 マニュアルを分厚くしなくても、スタッフが自分で考えて動ける。
清潔感は、写真では伝わりません。でも、来たお客様には確実に伝わります。
そして次に選ばれるかどうかは、たいていそこで決まっています。
シリーズ一覧|選ばれるレンタルスペースの作り方(全10回)
- #1 10年やってきて、大切にしてきた3つのこと
- #2 売れる施設の特徴3選と、半年で閉じた施設の話
- #3 料金設定|平米単価から逆算する方法
- #4 写真に、嘘がないこと
- #5 Googleビジネスプロフィールは、小規模事業者が戦える場所
- #6 レンタルスペースは、料理を美しく見せる器です
- #7 自動返信メールを、もっと働かせる
- #8 清潔感は、目ではなく肌で判断されている(この記事)
- #9 リピーターは、値引きでは増えません
- #10 パーティーを、受けないことにしました
あわせて読みたい|レンタルスペースの始め方
これから始める方向けの連載です。物件選び、資金、消防法、撤退ラインまで全13回。
【筆者】
レンタルスペースALBE 運営会社 株式会社ファーストクリエイト 代表取締役 鬼頭創一