【選ばれるレンタルスペースの作り方 #2】売れる施設の特徴3選と、半年で閉じた施設の話

事業者の方へ

レンタルスペースを運営していると、施設の見た目や広さ、立地に目が行きます。

きれいなほうがいい。広いほうがいい。駅から近いほうがいい。どれも間違いではありません。

ただ、10年やってきて思うのは、売上を決めているのはそこではないということです。

私たちは自社のスペースだけでなく、競合のスペースや東京エリアの施設もよく見ています。高稼働が続いている施設を見つけると、なぜなのかと気になって分析してしまう癖があります。

そうやって見てきた中で、売れているスペースに共通している特徴が3つに集約できると考えるようになりました。

  1. 多目的性
  2. 限定性
  3. 必要性

パーティールームでも、会議室でも、撮影スタジオでも共通します。

そして逆に言えば、この3つのどれにも当てはまらない中途半端な施設は、売上が伸びません。

私たち自身、この10年で当てはまらない施設を作ってしまい、半年でクローズした経験があります。 その話も最後に書きます。


1. 多目的性|幅広く受けられる施設は強い

多目的性の高い施設は、受注できる用途の幅がそのまま売上の幅になります。

私たちの名駅フリースペースがこれに当たります。

会議、ママ友会、コスプレ、パーティー、展示会。用途を選ばずに受けられるように施設と設備を整えてきました。結果として利用者の層が広く、高い稼働が続いています。

10年やってきて、多目的利用のスペースが最も売上につながるという実感があります。

最初から多目的だったわけではありません

ここが大事なところです。

私たちの事業は、この名駅フリースペース1つから始まりました。そして最初は撮影スタジオとしてスタートしています。

多目的を狙って作ったわけではないのです。

では何をしたか。お客様からの要望に、徹底的に応えていきました。

「椅子やテーブルはありますか?」と聞かれて、椅子とテーブルを買う。「コンサートできますか?」と聞かれて、音響設備を買う。その繰り返しです。

要望に応えた分だけ、受けられる用途が増えていきました。

同時に、余計なものは排除しました

設備を足す一方で、逆のこともしています。

多目的に使われるということは、お客様がそれぞれの世界観を持ち込むということです。こちらの色が強いと、その邪魔になります。

だから、余計なものはできるだけ置かないようにしました。

足すものと、置かないもの。 この両方を同時にやったことが、今の安定した稼働につながっていると思っています。


2. 限定性|他にないスペースは、立地を超える

限定性の高いスペースとは、競合他社にない、または真似できない表情を持つスペースです。

私たちの岡崎倉庫スペースが分かりやすい例です。

特殊なスタジオなので、利用目的はコスプレやバンドのミュージックビデオ撮影などに限られます。マーケットは極端に狭くなります。

それでも成立しています。

最大の特徴は、立地が悪くても売れること

稀有な施設であるため、立地の不利を跳ね返します。

地域に同じようなスタジオがないので、さらに稼働が維持されます。

面白いのは、東京や大阪など遠方からのお客様が多いことです。このスタジオの世界観を気に入って、わざわざ来てくださる。

近いから選ばれているのではなく、ここにしかないから選ばれているわけです。

ただし、弱点があります

限定性には明確な弱点があります。

同種のスペースが競合展開されたら、シェアが減ります。

「他にない」ことが強みなので、他にできた瞬間に強みが消える。ここは構造的な弱さです。

それを補うために、このスペースでは施設設備を増強してきました。更衣室やお手洗いなどです。

メインのフロアは無骨なイメージのままですが、女性中心のマーケットであるコスプレでも安心して利用できる環境が整っている。この下支えが人気を保っています。

世界観は変えず、使い勝手だけを上げる。 限定性を守りながら競争力を足す方法だと考えています。


3. 必要性|なくては困る施設は、リピートされる

3つ目は、お客様にとって代わりがきかないタイプです。

私たちの中では、名駅防音室(グランドピアノのある部屋)がこれに当たります。

音楽練習を必要としている学生さんにとって、学校以外で練習できる場所は必要です。プロの奏者にとっても、発表会直前の追い込みにとっても、絶対に要る場所です。

そのため、高稼働であると同時に高い確率でリピートされます。

背景にある条件

愛知県は昔から音楽に関連する人口が他府県より多く、そもそもの利用者数が多いという背景があります。

加えて、グランドピアノの練習ができる施設は地域に少ないため、限定性の要素も混じります。土日は特に、隙間なくフル稼働になります。

口コミで広がる

必要性の高いスペースには、もう一つ特徴があります。

リアルな口コミで広がっていくのです。友人からの紹介といった横展開で、利用者が増えていく傾向が強くあります。

必要としている人同士がつながっているからだと思います。


当てはまらなかった施設は、半年で閉じました

ここまでは、うまくいっている話です。

うまくいかなかった話も書きます。

私たちはかつて、古民家を使ったスペースを運営していました。そして半年でクローズしています。

施設の名前や場所は伏せますが、何が起きたかは共有する価値があると思います。

まず、3つのどれにも当てはまっていませんでした

和室という空間は、利用を限定します。 使える用途が絞られるので、多目的性はありません。

では限定性はあったか。ありませんでした。

ここが自分たちの見誤りでした。「古民家」という言葉には、他にない響きがあります。しかし実際の物件は、築年数がそこまで古いわけでもなく、昭和の古い家に近いものでした。一般的にイメージされる古民家とは、少し違っていたのです。

看板は借りられても、限定性は借りられません。

そして立地は郊外でした。必要性で人が来る理由もありません。

3つのどれにも届かないまま、走り出していたわけです。

用途を撮影に絞ったことも、良くありませんでした

途中で、用途を撮影に絞る判断をしました。

狭くすれば限定性が出るだろう、という考えです。しかしそうはなりませんでした。

理由は単純で、撮影スタジオという枠には競合がいくらでもあるからです。古民家という素材が珍しかったとしても、撮影用途に絞った時点で、その他大勢と同じ土俵に降りてしまいました。

ここで学んだことがあります。

限定性とは「狭くすること」ではなく「他にないこと」です。

自分から市場を狭めても、そこに先客がいれば限定性にはなりません。

決定的だったのは、値下げでした

そして最後は、ディスカウントに走ってしまったことが効きました。

埋まらないから下げる。下げても埋まらない。その結果、キャッシュが足りなくなりました。

値下げは即効性があるように見えます。しかし特徴のない施設の値下げは、選ばれる理由を価格だけにしてしまう行為です。そして価格競争に入った時点で、体力勝負になります。

半年で判断したのは、結果的には早かったと思っています。

なお、古民家という業態そのものを否定するつもりはありません。 古民家スペースをうまく運用されている方は実際にいらっしゃいます。私たちが失敗したのは、手がけた物件に特徴がなかったからです。


まとめ

スペースの見た目や広さといった外見に注目が集まりがちですが、売れる施設の特徴を中心に考えることが重要だと考えています。

私たちはこの3つに当てはまるよう、スペースの方向性と施設設備の増強をブレずに進めてきました。それが安定した売上につながっています。

とはいえ、正直なところ、実行し続けるのは並大抵のことではありません。 私たちも多くの失敗と試行錯誤を繰り返しながら10年続けてきました。

これから始める方も、すでに運営されている方も、まず自分の施設がこの3つのどれで戦っているのかを確かめてみてください。

どれにも当てはまっていないなら、それは価格ではなく、特徴のほうを見直す合図かもしれません。


運営者向けの記事


シリーズ一覧|選ばれるレンタルスペースの作り方(全10回)

あわせて読みたい|レンタルスペースの始め方

これから始める方向けの連載です。物件選び、資金、消防法、撤退ラインまで全13回。


【筆者】

レンタルスペースALBE 運営会社 株式会社ファーストクリエイト 代表取締役 鬼頭創一

関連記事