【選ばれるレンタルスペースの作り方 #10】パーティーを、受けないことにしました

事業者の方へ

レンタルスペースを運営していると、避けて通れない話題があります。

迷惑利用者への対応です。

同業の方なら、心当たりがあると思います。そして、あまり公に語られることがない話でもあります。

私たちは最終的に、アルベホール名古屋でパーティーを一切受けないという判断をしました。

収益の一部を、自ら手放したことになります。

今回は、そこに至るまでに何が起きて、どんな対策を取り、それでもなぜ足りなかったのかを書きます。そして、その後どうなったのかも。


「パリピ」と呼ばれる利用者たち

まず、何が起きていたのかを書きます。

彼らに共通しているのは、さまざまなレンタルスペースを利用しては出禁になり、また新しいスペースを探して、さらにそこで出禁になるという行動パターンです。

これを繰り返しています。意味のないことを続けているように見えます。

そして業界全体で、同じ被害が回り続けています。

具体的に何をされたか

私たちの施設で実際に起きたことです。

飲酒を禁止しているわけではありません。お酒を楽しんでいただくのは構わない。問題は、近隣に迷惑がかかる状態になることです。


苦情は、ビルオーナーから来ました

そして、恐れていたことが起きました。

近隣から、ストレートに電話が来たのです。

しかも、電話をしてきたのはビルオーナーさんでした。

ビルオーナーさんも、テナントさんから相談されてこちらに連絡してきた、という経路です。

これが一番まずい伝わり方です。直接の苦情ではなく、又聞きの形で、しかも私たちが部屋を借りている相手に届いている。


パーティーを受けないと決めた理由

この判断は、私自らが下しました。

今回は注意で収まりました。ただ、これが何度も続くようであれば、契約書的に問題になってしまいます。

そうなったら、私たちはそこでビジネスができなくなります。

計算するまでもありません。パーティーの売上を失うのと、施設そのものを失うのでは、比べる意味がない。

これ以上問題が起きないようにするためには、パーティーを受け付けないという根本的な手法を取らざるを得ませんでした。

ただ、この結論に至るまでには、数か月のテストマーケティングがあります。いきなり禁止にしたわけではありません。


対策1|音響オプションを、3,000円から2万円にしました

最初に取った対策です。

ここで、パリピに共通していることをひとつ挙げます。

あまりお金がない、ということです。

だから、料金でフィルターをかけました。

全体の料金は上げていません

上げたのは音響のオプション料金です。

それまで3,000円でお貸ししていたものを、2万円にしました。

ここが重要な点です。施設全体の料金を上げていません。

音を出さない利用者は、そもそもこのオプションを使いません。会議で借りる方にも、撮影で借りる方にも影響しない。問題の根源そのものに値段をつけた形です。

彼らは、意外と真面目に見学に来ます

もうひとつ、意外だったことがあります。

彼らは、ちゃんと事前に見学に来るのです。

自分たちがやりたいパーティーが実現できるかどうか。それを意外と真面目に確認しに来ます。

つまり、見学の時点でこちらの条件を見ているわけです。

そこで、一番問題になる音。その根源になるオプション料金を上げておくと、手を出さなくなります。

数か月試して分かりましたが、彼らは料金に対して非常に敏感です。 高いとお金が出せないので、手を引きます。


対策2|身分証の提示を求めました

もうひとつの対策が、身分証の提示です。

これも効きました。彼らは、身分証の提示をすごく嫌がります。

当然だと思います。

めちゃめちゃにして帰るつもりの人が、自分の痕跡を残していくはずがありません。

ここが、この対策の優れているところです。

真っ当なお客様は、身分証の提示を嫌がりません。 会社で借りる方も、家族で使う方も、普通に応じてくださいます。

同じルールなのに、相手によって効き方がまったく違う。 これがフィルターとして機能する理由です。


対策3|飲食の持ち込み料を、設けました

もうひとつ、効果のあった対策があります。

飲食を持ち込む場合の「持ち込み料」です。

理由は単純です。彼らは、デリバリーや持ち込みのドリンクで騒ぎたいわけです。

飲食がないと、アルコールがないと、盛り上がりません。そこが目的だからです。

そこで、飲食やドリンクを持ち込む場合は持ち込み料をいただく制度にしました。金額は5万円という、少し驚くような設定にしています。

発想は、ホテル時代のものです

この「持ち込み料」という考え方は、私が思いついたものではありません。

ホテルマン時代にあった、ホテル独特のビジネスモデルです。

結婚式や一般宴会で、ホテルのサービス以外の料理やお酒を外部から持ち込む場合、持ち込み料をいただくという制度がありました。今はどうか分かりませんが、昔はしっかり取っていました。

これは逆に言えば、持ち込みをしたい方にとってはかなりの負担になるものです。

本来は自社の料飲売上を守るための仕組みですが、それを対策用に使わせてもらったという話です。

ここでも、真っ当なお客様には影響しません

会議で弁当を取る程度であれば、量も性質も違います。展示会やポップアップの利用とも無縁です。

大量の酒類を持ち込んで騒ぎたい人にだけ、重く効きます。


それでも、防げませんでした

対策は打ちました。効果もありました。

それでも、決定打となる出来事が起きました。

「フリーマーケット」のはずでした

そのお客様は、きちんと見学にも来ていました。

そして、開催の趣旨をフリーマーケットと申告されました。

アルベホール名古屋では、フリーマーケットでの利用はちょくちょくありました。 よくあるイベントのひとつです。

だから、特に疑う理由もなく受けました。

当日、まったく別のものが始まりました

ところが当日になって、大型スピーカーと大量のお酒を持ち込んで、パリピを始めたのです。

事前情報の開催趣旨と、実際がまったく異なるイベントでした。

さすがに私も切れて、即時、撤収をお願いしました。

彼らは、すんなり帰りました

そして、これが一番印象に残っていることです。

撤収を求めたとき、意外と彼らはすんなり帰りました。

おそらく、このようなケースは初めてではないのだと思います。同じように撤収を求められることが、何度もあったのではないでしょうか。

もちろん、返金もしていません。

申告した用途と違う使い方をされた時点で、こちらに非はありません。

ここが判断の分かれ目でした

この一件で、私は決めました。

見学にも来ていた。目的も聞いていた。料金のフィルターもかけていた。身分証も確認していた。

こちらがやれる確認は、全部やっていたのです。

それでも防げなかった。

だから、用途そのものを受け付けないという判断に至りました。 対策を怠ったからではなく、対策を尽くしてもなお防げなかったからです。


では、アルベホールはどうなったのか

パーティーを一切受けなくなった施設が、その後どうなったのか。

気になる方もいると思います。

この機会に、展示会やポップアップしか受けない施設に切り替えました。

追い込まれて、探した結果です

正直に書きます。

絶対的な自信があったわけではありません。

何度かポップアップイベントを開催されるお客様があって、今後需要が期待できるとは判断していました。ただ、確信までは持てていなかった。

収入源を断たれてしまったので、他にどこか頼るマーケットはないかと探した。 その結果、たどり着いたのです。

ある意味、不幸中の幸いだったかもしれません。

結果として、客層が入れ替わりました

そして、思わぬ効果がありました。

展示会やポップアップの主催者は、会場を汚したり、近隣に迷惑をかけたりしません。

理由は単純で、その方たちも商売としてやっているからです。次も使う場所を、自分から壊すことはしません。

用途を絞ったことが、そのまま利用者の質の管理になりました。


まとめ|断ることも、運営の一部です

整理します。

私たちが取った対策は、次の4つです。

  1. 問題の根源になるオプションの料金を上げる(施設全体の料金は上げない)
  2. 身分証の提示を求める(真っ当な利用者は嫌がらない)
  3. 飲食の持ち込み料を設ける(目的そのものを成立しにくくする)
  4. それでも防げないなら、用途そのものを受け付けない

前の3つに共通しているのは、禁止していないということです。

「パーティー禁止」と書いても、フリーマーケットと申告されれば通ってしまいます。ルールで縛るより、条件で合わなくするほうが確実でした。

そして最後の判断は、勇気が要ります。確実に売上が減るからです。

ただ、私たちが守るべきものは、その施設で事業を続けられる状態です。ビルオーナーさんとの関係も、近隣との関係も、そこに含まれます。

一部のお客様を断ることで、他の大多数のお客様を守れるのであれば、それは正しい判断だと思っています。

そして、断ったあとに何ができるかを探すこと。それも運営の仕事です。


シリーズ一覧|選ばれるレンタルスペースの作り方(全10回)

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これから始める方向けの連載です。物件選び、資金、消防法、撤退ラインまで全13回。


【筆者】

レンタルスペースALBE 運営会社 株式会社ファーストクリエイト 代表取締役 鬼頭創一

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