
レンタルスペースを始めるとき、何を作るかは需要から逆算して決まります。
会議向けなのか、レッスン向けなのか、撮影向けなのか。それによって必要な広さも、設備も、立地も変わります。
では、今どこに需要があるのか。
この10年で、利用のされ方は大きく変わりました。 特にコロナ禍の前後では別物です。
今回は、実際に起きた変化と、その変化をどうやって掴んだのかを書きます。
需要が戻るのに、1年かかりました
まず、あの時期に何が起きたかを正直に書きます。
コロナ禍で、需要は完全にストップしました。
人が集まることそのものが難しくなったので、当然といえば当然です。
そして、需要が戻るのに1年ほどかかっています。
ただ、戻ってきたときには、元どおりではありませんでした。
振り返ってみて初めて、需要が大きく変化していたことに気づきました。
変化を、どうやって掴んだか
ここが今回の本題です。
打ち手を考えるにしても、当てもなく考えても仕方がありません。
そこで私たちがやったのは、お客様に直接聞くことでした。
新規のお客様に、理由を聞きました
レッスンの先生として来られた新規のお客様には、こう聞きました。
「なぜ、レンタルスペースにしたのですか?」
ポップアップ利用のお客様には、こう聞きました。
「なぜ、東京から来られているのですか?」
満足度でも、要望でもありません。そもそもなぜここに至ったのかを聞いています。
お客様に聞くのが、最短距離でした
統計を調べることも、市場調査をすることもできたと思います。
ただ、お客様に聞くことが最短距離だと考えました。
そして実際、お客様は私たちの質問に快く答えてくださいました。
考えてみれば当然です。皆さん、場所を探して来られている。 自分の事情を説明したい場面なのです。聞かれて嫌がる状況ではありませんでした。
増えたもの①|小規模なレッスン系の利用
まず、明確に増えたのがレッスン系の利用です。
そして、その背景が聞いてみて分かりました。
個人の先生が、自前のスタジオを手放していました
大きな傾向として、個人でレッスンをされている先生が、持っていたスタジオを手放しているのです。
理由は複数ありました。
- コロナ禍でレッスンが中止になり、固定費を回収できなかった
- コロナ後も、生徒さんが戻ってこない
- 生徒さんのほうが、レッスンを分散するようになった
- 月に数回の利用のためにスタジオを借りるのは、リスクが大きい
オンラインで乗り切れた。でも、それだけでは足りなかった
興味深かったのは、この先の話です。
レッスン系の先生方は、オンラインでコロナ禍を乗り切りました。
ところが、やはり対面でのレッスンは必要だったのです。特に女性中心のレッスンでは。
理由を聞いて、なるほどと思いました。
レッスンそのものだけでなく、おしゃべりも大事な要素だったそうです。
集まって、教わって、話す。その全部が価値だった。オンラインでは前半しか満たせません。
つまり、こういう順番です
固定費を削るためにスタジオを解約した。しかし、場所は必要だった。
そこで、レンタルスペースのほうがコスパが良いと判断された。
多くのレッスン系の先生が、同じことを話してくださいました。
増えたもの②|ポップアップ
もうひとつ増えたのが、ポップアップ利用です。
そして、構造はまったく同じでした。
固定費削減のために店舗を閉めて、ネット販売に注力する。
そのうえで、定期的に各地方でポップアップとしてリアル展開するほうがコスパが良いと判断されている。
常設の店舗は持たない。でも、リアルで会う価値は残っている。 だから必要なときだけ借りに来る。
増えたもの③|企業の会議利用
そして、企業からの利用も増えました。
入社説明会の需要。そして社内会議の需要です。
これも理由は同じでした。
事務所の固定費削減のために会議室を手放し、必要なときに近隣の貸し会議室を使うという動きです。
共通しているのは、ひとつの構造です
3つ並べてみると、まったく同じ形をしています。
固定費を削るために自前の場所を手放した。しかし、対面の需要そのものは消えていなかった。
だから、借りに来る。
手放したけれど、なくならなかった需要。 そこにレンタルスペースがはまっています。
言い換えれば、レンタルスペースという事業は、他者が自前の設備を持たなくなった分を引き受けているわけです。
固定費を変動費に変える動きが続く限り、この需要は続くと考えています。
一方で、減ったものもあります
増えた話ばかりでは、判断を誤ります。減ったものも正直に書きます。
コスプレの大規模利用
コスプレ利用そのものがなくなったわけではありません。ただし、小規模化しました。
以前は数十人単位の「合わせ」がありましたが、今は数人規模の利用が中心です。
ママ友会
こちらは、利用が激減しました。
感染症などの心配からだと思います。
この2つは、戻ってこないと見ています
ここが重要な判断です。
私は、コスプレの大型案件とママ友会は、おそらく戻ってこないと考えています。
理由は、新たな活動のステージを見つけたからです。
コスプレは、発表の場が移りました
コスプレであれば、よりSNSなどでのパフォーマンスが中心になりました。
複数で大人数で交流することよりも、Instagramなどの隆盛とともに、ステージそのものが移行したのだと思います。
場所の需要が、プラットフォームに吸われたということです。
ママ友会は、衛生観念が変わりました
こちらは、衛生観念の大幅な変化が影響していると思います。
大人数が集まることのリスク。 その意識が残りました。
そして、コミュニティとしての機能は、SNSやネット上でという切り分けができてきているようです。
だから、今後も見込みは薄いと判断しています。
痛かったのは、時間帯です
正直、これは残念でした。
ママ友会は、平日の午前という、ありがたい需要だったからです。
売上が減ったという話だけではありません。平日の昼間は、もともと埋めるのが難しい時間帯です。そこを埋めてくれる客層が消えたのは、在庫の穴として痛い。
待ってはいけません
減った需要について、ひとつ言えることがあります。
一時的な自粛なら、戻ります。
しかし、別のやり方で満たされるようになった需要は、戻りません。
コスプレもママ友会も、代替手段が定着してしまいました。だから待っても仕方がない。
これから始める方が見るべきなのは、増えている場所です。
そしてその場所は、統計より先に、目の前のお客様が教えてくれます。
「なぜ、ここを選んだのですか」
この質問をするだけで、驚くほど多くのことが分かります。
次回
次回は、どのセグメントで戦うかを書きます。
会議室、レンタルルーム、撮影スタジオ、設備依存型。それぞれに競合の状況がまったく違います。
そして、初期投資が少ない領域ほど競合が多いという逆説についても書きます。
シリーズ一覧|レンタルスペースの始め方(全13回)
- #1 初月の売上は、5万円でした
- #2 需要は、お客様に聞くのが一番早い(この記事)
- #3 初期投資が少ない領域ほど、競合が多い
- #4 最初に揃えない。聞かれてから足す
- #5 「レンタルスペース? 何それ」から始まります
- #6 パルコから1分の物件を、諦めた話
- #7 断られた物件に、入居できた話
- #8 開業前の挨拶が、後で効きます
- #9 この商売は、魚屋さんと同じです
- #10 ゴールは、家賃の2倍です
- #11 一人で5スペース。ただし休みはありません
- #12 規約を一番読んでいるのは、悪意を持った人です
- #13 最終回|どこにお金をかけるか
あわせて読みたい|選ばれるレンタルスペースの作り方
すでに運営されている方向けの連載です。料金、写真、集客、清掃、リピーターまで全10回。
【筆者】
レンタルスペースALBE 運営会社 株式会社ファーストクリエイト 代表取締役 鬼頭創一