【レンタルスペースの始め方 #5】「レンタルスペース? 何それ」から始まります

事業者の方へ

物件を借りて始めようとする方が、最初にぶつかる壁があります。

貸してもらえないのです。

内装でも、集客でも、料金設定でもありません。その手前で止まります。

今回は、不動産オーナーにどう理解してもらうかという話を書きます。そして、それでも断られることが多いという現実についても、正直に書きます。


オーナーから見ると、分からない業態です

まず、相手の立場を考えてみます。

不動産オーナーにとって、美容室やカフェは受け入れやすいテナントです。

理由は単純で、何が起きるか想像できるからです。どんなお客様が来て、何時から何時まで営業して、どのくらいの音がして、どんな設備が要るのか。だいたい分かります。

レンタルスペースは、そうではありません。

「レンタルスペース? 何それ」から始まります。

分からないものは怖い。これは当然の反応だと思います。

地方では「又貸し」と認識されます

さらに、地域差があります。

都内などはレンタルスペース事業に対する認識・理解があるので、物件の調達はしやすいです。

一方で、地方都市の不動産オーナーの多くは「又貸し」として認識します。

自分が貸した部屋を、さらに他人に貸している。そう受け取られると、話が進みません。

私たちも名古屋で、ここには長く苦労してきました。


だから、資料を作って持っていきます

では、どうするか。

私たちは、不動産オーナーさんや仲介業者さんに、レンタルスペース事業とはどのようなものかをまとめた提案資料を提出しています。

口頭で説明して終わりにはしません。資料にして渡します。

入れている項目

構成は、おおむね次のとおりです。

1. 私たちについて(実績)

運営年数、累計の予約件数、運営スペース数、地域でのシェア。

まず「怪しい事業者ではない」という前提を作ります。 ここが崩れると、何を説明しても届きません。

2. レンタルスペースとは何か

一般的なテナント賃貸との比較表を載せています。

借り手、内装・造作、建物への負担、館内の雰囲気。この4項目で並べます。

知らないものを説明するときは、相手が既に知っているものとの差分で説明する。 これが一番伝わります。

3. どのような利用が中心か

利用者像と、どんな催しが行われるか。来場者の規模や時間帯も含みます。

4. 運営実績

実際に運営している施設と、開催された催事の例。

5. オーナー様のメリット

ビルの認知度やにぎわいの向上。建物を傷めにくい運営であること。運営はすべて当社が担当すること。

6. 会社概要

所在地、設立、代表者、事業内容、主な取引先。


順番には、意味があります

この構成で、意識していることがひとつあります。

メリットを語る前に、不安に答える。

3番目の「どのような利用が中心か」で、私たちは最初にこう書いています。

基本は「静かな利用」です。

パーティーのような賑やかな利用はお受けしていないこと。近隣や他テナント様へのご迷惑になる利用はお断りしていること。

オーナーが最も恐れているのは、騒音とトラブルです。

そこに答える前に「ビルのにぎわいにつながります」と言っても、耳に入りません。

建物への負担も、先に説明します

もうひとつ、オーナーが気にするのが原状回復です。

大掛かりな内装工事をされて、退去時に揉める。これはテナント貸しでよくある話です。

私たちの運営は、大掛かりな造作を行わず、スケルトンに近い形で行います。だから建物への負担が小さく、原状回復の心配も少ない。

これは他の業種にはない利点なので、はっきり書いています。


契約は、普通の賃貸借契約です

よく聞かれるので書いておきます。

契約形態は、普通の賃貸借契約です。

特別な契約形態を使っているわけではありません。


それでも、断られます

ここからが正直な話です。

資料を作って、丁寧に説明して、それで通るかというと、そうではありません。

それでも最終判断でNGされることは多いです。

これは書いておかなければいけないと思っています。「ちゃんと説明すれば大丈夫」という話ではありません。


構造的に、折り合わないことがあります

断られる理由のひとつに、どうにもならない構造があります。

既存テナントとの競合です。

たとえば、こういうケースです

オーナーとしては、すでに入居済みのテナントと競合するようなことが起こるのは避けたいと考えます。

たとえば、2階がアパレルなのに、1階で別ブランドのアパレルのポップアップを開催したら、営業妨害になります。

これは当然の懸念です。テナントから苦情が来ますし、オーナーには既存テナントを守る責任があります。

しかし、こちらも選べません

一方で、レンタルスペース事業者側からすると、アパレルブランドを選別して受注するわけにもいきません。

「このブランドはお断りします」という運用は現実的ではありませんし、そもそもそれをやると商売になりません。

そこで折り合いがつかなくなることもあります。

どちらも、正しいのです

ここが難しいところです。

オーナーは既存テナントを守ろうとしている。事業者は事業として成立させようとしている。

両方が誠実に考えるほど、折り合わなくなる。

こういう物件は、残念ですが縁がなかったと考えるしかありません。


ただ、状況は変わってきました

暗い話ばかり書きましたが、最近は変化があります。

名古屋でも、理解を示してくれる不動産オーナーが増えてきました。

理由のひとつは、コロナ禍後にテナントが埋まらない現象ではないかと思っています。

空室が長引けば、オーナーも選り好みができません。「レンタルスペース? 何それ」で断っていた物件が、検討の土俵に乗るようになりました。

つまり、今は借りやすい時期です

これから始める方にとっては、追い風です。

数年前より、確実に物件は取りやすくなっています。空室が長引いている物件であれば、条件交渉の余地もあるかもしれません。

そして第2回で書いたとおり、企業は会議室を手放し、レッスンの先生はスタジオを手放しています。

固定費を減らす動きが、テナントの空室にも現れている。

その空いた場所を借りて、手放した人たちに時間単位で貸す。

業界の構図は、ひとつの線でつながっています。


まとめ

物件を借りて始めようとする方へ、3つだけ。

1. 説明資料を作る

口頭では伝わりません。書いて渡す。そしてメリットより先に、不安に答える構成にする。

2. それでも断られると知っておく

準備を尽くしても通らないことがあります。断られたからといって、準備が無駄だったわけではありません。

3. 今は、比較的借りやすい時期

空室が増えたことで、理解が進んできました。動くなら悪くないタイミングです。

そして次回書きますが、断られた物件が後から通ることもあります。


次回

次回は、立地の考え方を書きます。

立地は最も重要です。ただし、駅前立地が絶対ではありません。

名古屋は車社会なので、少し離れていても駐車場があれば集客できます。郊外でも成立するケースもあります。

家賃を抑えられる立地を、どう見つけるかという話です。


シリーズ一覧|レンタルスペースの始め方(全13回)

あわせて読みたい|選ばれるレンタルスペースの作り方

すでに運営されている方向けの連載です。料金、写真、集客、清掃、リピーターまで全10回。


【筆者】

レンタルスペースALBE 運営会社 株式会社ファーストクリエイト 代表取締役 鬼頭創一

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