【レンタルスペースの始め方 #3】初期投資が少ない領域ほど、競合が多い

事業者の方へ

レンタルスペースは、新規参入しやすい業界です。

特別な資格は要りません。厨房設備も、仕入れも、専門技能も不要です。部屋があって、貸す仕組みがあれば始められます。

ただし、その点において競合が多い。

参入しやすいということは、他の人も同じように参入できるということです。

今回は、どのセグメントで戦うかという話を書きます。ここを間違えると、他がどれだけ正しくても苦しくなります。


セグメントごとに、状況はまったく違います

ひとくちにレンタルスペースと言っても、中身は別々の商売です。

マンションの一室型(レンタルルーム)

初期投資が少なく開業できるため、競合過多です。

マンションやアパートの一室を借りて、家具を置いて貸す。参入のハードルが最も低い形です。

だからこそ、同じことを考える人が多い。 差別化する要素も限られます。

会議室

大手の企業が幅広く展開しています。

駅前の好立地に、複数のフロアを押さえて運営している事業者があります。設備も運営も標準化されていて、法人からの信頼もある。

無名の一室で、ここに正面から挑むのは簡単ではありません。

撮影スタジオ

ここは逆に、需要を伸ばせる伸びしろがあります。

特に今、無人の撮影スタジオが人気です。

設備依存型(エクササイズ、音楽練習など)

目的が部屋ではなく設備にあるタイプのスペースです。

ここはロケーションによって需要を高められるという特徴があります。後で詳しく書きます。


「無人の撮影スタジオ」とは何か

少し補足します。

これは、カメラマンに撮影してもらう従来型の撮影スタジオモデルではありません。

撮影できる環境を用意しておくので、撮影はお客様ご自身でどうぞという、新しいスタジオ利用モデルです。

用意するのは、環境です

背景だけではありません。照明も用意します。スタジオによってはカメラもあります。

つまり、こういう需要を拾っています。

高いお金を払ってカメラマンにお願いして撮影してもらうのではなく、自分で好きなように撮影できる環境があればOK。

撮るものが、変わりました

背景にあるのは、撮影する目的そのものの変化だと思います。

かつて写真は、思い出や記録でした。七五三、成人式、結婚式。一生に何度もない場面を、プロに残してもらう。

今は違います。

Instagramなどの「映え写真」のための場所と考えるのが近い。

日常的に、何度も撮ります。頻度がまったく違う。そして、スマートフォンで十分な画質が撮れるようになりました。

足りないのは技術ではなく、背景と照明だけです。

そこを用意すれば、商売になります。


ここからが本題|初期投資と競合の逆説

さて、4つのセグメントを並べてみて、気づくことがあります。

初期投資が少ない領域ほど、競合が多いのです。

マンションの一室は、最も少ない資金で始められます。だから最も混み合っている。

一方で、防音室や撮影設備のようにまとまった投資が必要な領域は、競合が少ない。

つまり、投資が参入障壁になります

お金がかかることが、そのまま守りになっているわけです。

誰でも真似できるものは、誰かに真似されます。真似するのに費用がかかるものは、そう簡単に追いつかれません。

これは、始める前に知っておくべき構造だと思います。

「初期投資が少なくて済む」は、メリットではなく警告かもしれません。


そしてもうひとつ|立地の自由度が変わります

投資の話には、続きがあります。

設備依存型のスペースは、立地の自由度が高いのです。

ニーズは、距離と時間を超えることがある

理由はこうです。

目的を達成したいというニーズは、距離と時間を超えることがあります。

グランドピアノが弾ける防音室は、地域に多くありません。だから、多少遠くても人は来ます。駅から離れていても、駐車場があれば成立します。

代わりがないから、遠さが問題にならない。

最も顕著なのが、岡崎の倉庫スペースです

私たちが運営している施設で、これが最もはっきり出ているのが岡崎の倉庫スペースです。

立地は決して良くありません。それでも、東京や大阪など遠方からのお客様が多い。

この世界観が気に入って、わざわざ来てくださいます。

近いから選ばれているのではありません。ここにしかないから選ばれています。


逆に、代わりがあるものは近さで選ばれます

この裏返しを考えると、判断の筋道が見えてきます。

会議室やレンタルルームは、どこにでもあります。

どこにでもあるということは、近いところが選ばれるということです。

わざわざ遠くの会議室を選ぶ理由はありません。だから、駅前の一等地でないと勝てない。

そして駅前の一等地は、家賃が高く、しかも競合だらけです。


整理すると、こうなります

2つの話を重ねると、はっきりします。

初期投資 競合 立地
代わりがあるもの(会議室、レンタルルーム) 少ない 多い 一等地が必要=家賃が高い
代わりがないもの(防音室、特殊スタジオ) 多い 少ない 郊外でも成立=家賃が安い

初期投資が必要なセグメントほど、家賃の安い場所で戦えます。

投資が参入障壁になり、同時に立地の自由度も上がる。二重に効いています。

もちろん、投資できる金額には限りがあります。だから誰にでも勧められる話ではありません。

ただ、「安く始められるから」という理由だけでセグメントを選ぶのは危険だということは、書いておきたいと思います。


私たちは、運が良かっただけです

第1回でも書きましたが、正直なことを繰り返します。

私たちは、たまたまスタジオから入れたのがラッキーでした。

当時、貸し会議室の業態はすでに顕在化していました。でもスタジオとしての出展数は少なかった。 だから、やってみたら初月から予約が入りました。

戦略的に選んだわけではありません。 たまたま持っていた場所が、たまたま空いている市場だった。

仮に会議室から入っていたら、おそらく続かなかったと思います。

だからこそ、これから始める方には、その選択を意図的にやってほしいと思っています。

私たちが運で手に入れたものを、あなたは判断で手に入れられます。


始める前に、確かめてほしいこと

セグメントを決める前に、3つだけ確認してみてください。

1. その地域に、同じようなスペースはいくつあるか

ポータルサイトを見れば、おおよそ把握できます。数が多ければ、価格競争になります。

2. それは、真似しやすいものか

自分が明日から真似できるものなら、他の人も真似できます。

3. 距離を超えてまで来てもらえるものか

来てもらえるなら、立地の選択肢が一気に広がります。家賃も下げられます。


次回

次回は、ミニマルに始めて、需要に応じて広げるという話を書きます。

今回「投資が参入障壁になる」と書きましたが、最初から大量の資金を投入するのは危険です。

一見矛盾するこの2つを、どう両立させるか。私たちの実例で書きます。


シリーズ一覧|レンタルスペースの始め方(全13回)

あわせて読みたい|選ばれるレンタルスペースの作り方

すでに運営されている方向けの連載です。料金、写真、集客、清掃、リピーターまで全10回。


【筆者】

レンタルスペースALBE 運営会社 株式会社ファーストクリエイト 代表取締役 鬼頭創一

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