【レンタルスペースの始め方 #8】開業前の挨拶が、後で効きます

事業者の方へ

物件が決まって、消防の条件もクリアした。

次は内装だ、集客だ、と気持ちが前に向く時期です。

その前に、やっておくべきことがあります。

近隣への挨拶です。

地味な話に聞こえると思います。ただ、これをやったかどうかで、後から起きることの重さが変わります。

今回は、そこを実例で書きます。


どこまで回るか

私たちは、開業前の挨拶をしっかりやります。

範囲はこうです。

ビル全体は必須です。

同じフロアだけでは足りません。上の階も下の階も回ります。音や人の出入りは、フロアを越えて伝わるからです。

そして、できれば近隣もまわります。

隣接する建物、向かいの店舗。ビルの外に影響が出る可能性があるなら、そこまで含めます。

誰に、何を渡すか

ビルメンテナンス会社や不動産オーナーさんにも、菓子折りとともに説明資料などを持っていきます。

第5回で書いた、レンタルスペース事業の提案資料です。

そして伝えるのは、ひとつです。

きちんと真面目に事業をやっている。

これを説明しに行きます。


なぜ、そこまでやるのか

正直に言えば、面倒な作業です。時間もかかります。

それでもやる理由があります。

実際に、この関係に助けられたことがあるからです。


実際にあった話

私たちが運営しているアルベホール名古屋で、トラブルが起きたことがあります。

利用者が室内で喫煙し、泥酔して騒ぎ、屋外で吸い殻をポイ捨てする。そういう利用が続いた時期がありました。

そして、近隣から苦情が来ました。

電話は、ビルオーナーから来ました

苦情は、ストレートに電話で来ました。

しかも、電話をしてきたのはビルオーナーさんです。

ビルオーナーさんも、テナントさんから相談されてこちらに連絡してきた、という経路でした。

一見、最悪の経路です

これは、一番まずい伝わり方に見えます。

直接の苦情ではなく、又聞きの形で、しかも私たちが部屋を借りている相手に届いている。

契約の話になってもおかしくありません。

でも、大ごとにはなりませんでした

結果として、大ごとにはなりませんでした。

理由は、はっきりしています。

事前にビルオーナーさんとの関係ができていたからです。

顔を知っている相手だから、まず電話をくれた。 事情を聞いてくれた。

関係がなければ、どうなっていたか分かりません。いきなり契約の話になっていたかもしれませんし、テナントから直接、もっと強い形で来ていた可能性もあります。


予防策の、本当の意味

この経験から、考え方が変わりました。

予防策は、問題を起きなくするものではありません。

挨拶をしたからといって、トラブルが起きなくなるわけではないのです。実際、私たちは起こしました。

予防策は、起きたときの着地を変えるものです。

同じトラブルでも、関係があれば電話で済む。関係がなければ、いきなり最終通告になる。

そこが違います。


定期的な接点は、持っていません

正直に書いておきます。

開業後、定期的な接点は持っていません。

年に一度挨拶に行くとか、イベントの予定を毎回知らせるとか、そういう運用はしていません。

開業前に一度きちんとやっておけば、それで足りるというのが実感です。

顔を知っていて、何をやっている会社か分かっている。その状態さえ作れていれば、必要なときに動けます。

無理に接点を作り続ける必要はないと思っています。


同じ訪問で、もうひとつやっています

そして、この挨拶にはもうひとつの意味があります。

入居しているビルに企業が入っているのであれば、「会議室利用としてお使いいただいてもいいですよ」と伝えます。

何かしらアドバンテージをつけて、利用促進につなげるわけです。

これは、開業前の挨拶のときに一緒に伝えます。

苦情を言う側が、お客様になります

考えてみると、面白い構図です。

同じビルのテナントは、苦情を言う側になるかもしれない相手です。音が響けば、最初に気づくのは彼らです。

その相手に、挨拶の場でお客様になっていただく提案をしている。

条件としても、悪くありません

そして、企業側にとっても悪い話ではありません。

移動がゼロです。 必要なときだけ使えます。自社で会議室を持つ必要がない。

第2回で書いたとおり、事務所の固定費削減のために会議室を手放し、近隣の貸し会議室を使うという流れが起きています。

その需要が、同じビルの中にあります。

関係の質も変わります

取引があれば、関係が変わります。

何かあったときに、直接言ってもらえるようになる。

先ほど書いたトラブルは、テナント→ビルオーナー→私たち、という又聞きの経路で届きました。取引先であれば、直接電話が来ます。

そのほうが、早く手を打てます。


守りが、そのまま攻めになります

整理すると、こういうことです。

開業前の挨拶は、トラブルへの備えです。守りの施策です。

しかし同じ訪問が、集客の入口にもなります。

一度の訪問で、両方できます。

面倒な作業だと書きましたが、費用はほとんどかかりません。 菓子折り代と、歩く時間だけです。

それで、トラブルの着地が変わり、お客様が増える可能性がある。

やらない理由がありません。


まとめ

1. ビル全体は必須。できれば近隣も

音や人の出入りは、フロアを越えて伝わります。

2. 菓子折りと説明資料を持って、事業の説明をする

「きちんと真面目にやっている」と伝えることが目的です。

3. 定期的な接点は要らない

開業前に一度やっておけば足ります。

4. 同じ訪問で、会議室利用を案内する

守りの施策が、そのまま集客になります。


次回

次回から、お金の話に入ります。

まずは資金調達と運転資金です。

レンタルスペースは、始めてすぐにお客様が入る事業ではありません。少しずつ売上を伸ばしていく体力が必要です。

そして、撤退ラインをどこに引くかという話も書きます。ここを決めておかないと、判断が遅れて負債だけが残ります。


シリーズ一覧|レンタルスペースの始め方(全13回)

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すでに運営されている方向けの連載です。料金、写真、集客、清掃、リピーターまで全10回。


【筆者】

レンタルスペースALBE 運営会社 株式会社ファーストクリエイト 代表取締役 鬼頭創一

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