
レンタルスペースにおいて、立地は最も重要です。
どれだけ素敵なスペースを作っても、集客しにくい立地では難しい。
個人の集まりにしても、イベントにしても、集まりやすい場所であることは選択肢としてかなり上位に来ます。
ただし、ここで誤解されやすいことがあります。
駅前立地が絶対ではありません。
今回は、立地の考え方と、私たちが物件を諦めた実例を書きます。
駅前が絶対ではない理由
名古屋で運営していて実感するのは、土地柄によって正解が変わるということです。
名古屋は車社会です。
だから、駐車場が大事になります。
少し離れていても、駐車場があれば集客は可能です。逆に、駅前でも駐車場がなければ使いにくい利用があります。
搬入がある催しなら、なおさらです。
郊外型も狙えます
スペースの種類によっては、郊外型も十分に狙えます。
たとえば、大型ショッピングモールの近隣でエクササイズや音楽練習のレッスン。これは有効です。
ただし、理由は「集客」ではありません
ここは補足が必要だと思います。
モールの近隣が良いのは、モールに来た人が流れてくるからではありません。
人が集まる場所は、生活動線に組み込まれているからです。
普段からその方向に人が動いている。買い物に行く、家族を送る、用事を済ませる。そういう動きの中に組み込まれている場所は、行きやすい。
逆に言えば、こうなります。
人が集まらない場所には、そもそも需要がありません。
立地を見るとき、その場所に人の流れがあるかどうかを見ています。駅前かどうかではありません。
そして、家賃が下がります
郊外型の利点は明確です。
家賃も都心と比べると少し安いので、走りやすい。
第3回で書いたとおり、代わりがないスペースは距離を超えて選ばれます。 設備依存型のスペースであれば、この選択肢が現実的になります。
物件を見るときに、確認していること
ここからは実務の話です。
内見のときに必ず確認している項目があります。スペースの規模によって、見る場所が変わります。
大型のスペースの場合
- 搬入動線
- エレベーター
- 電源
- トイレなど水回り
イベントや展示で使うなら、物が入らなければ話になりません。 そして人数が集まるなら、水回りの状況が利用の快適さを左右します。
小型のスペースの場合
- 出入りのしやすさ
規模が小さくても、入りにくい場所は選ばれません。
パルコから1分の物件を、諦めました
実際にあった話を書きます。
条件は、かなり良い物件でした。
- 家賃も、とても良い
- ロケーションはパルコから1分
立地としては申し分ありません。人の流れも十分です。
それでも、諦めました。
理由は、階段でした
その物件は2階にあり、そこまでの動線が階段しかなかったのです。
エレベーターがない。
それ以外はすべて合格点でした。家賃も、場所も、広さも。
しかし、この一点は譲れない条件でした。
理由は、搬入出です
なぜそこまでこだわるのか。
搬入・搬出で苦労するからです。
展示の什器、機材、商品。それを毎回、階段で2階まで運ぶ。主催者にとっては相当な負担になります。
主催者の気持ちになれば、分かります
そして、ここが判断の核心です。
利用後に「良かったけど……」と、何か引っかかりができると、再度の予約の気持ちは削がれます。
内容は良かった。場所も良かった。でも、搬入が大変だった。
そうなると、こうなります。
「ちょっと大変だったから、次の機会は他もあたってみようかな」
一度でもそう思われたら、リピートは遠のきます。
前々回で書いたとおり、レンタルスペースの売上を支えるのはリピーターです。最初から「良かったけど……」が付く物件を選ぶのは、自分で不利を背負うことになります。
妥協は、後で後悔につながります
私たちの物件選びの基準は、はっきりしています。
何か一つでもNGな項目があれば、その物件は諦めます。
理由は単純で、妥協は後で後悔につながるからです。
契約したら、変えられません
内装は変えられます。設備は足せます。料金も見直せます。
しかし、建物の構造は変えられません。
エレベーターがない物件に、後からエレベーターは付きません。搬入経路が狭い物件は、ずっと狭いままです。
そして家賃は、契約している間ずっと発生します。
「この一点だけ我慢すれば」と思って契約すると、その一点を毎月お金を払いながら我慢し続けることになります。
良い条件が揃っているときほど、危ない
パルコから1分で、家賃も良い。こういう物件に出会うと、気持ちが先に動きます。
「ここを逃したら、次はいつ出るか分からない」
その焦りが、判断を鈍らせます。
良い条件が9つ揃っていても、譲れない1つが欠けているなら、それは自分の物件ではありません。
まとめ
立地について、3つだけ。
1. 駅前が絶対ではない
土地柄によって正解が変わります。名古屋なら駐車場。郊外なら生活動線。
2. 人の流れがあるかどうかを見る
集客できる場所かどうかではなく、そもそも人がその方向に動いているか。 人が集まらない場所には、需要がありません。
3. 一つでもNGがあれば諦める
建物の構造は変えられません。そして、主催者が「良かったけど……」と思う要素は、次の予約を確実に削ります。
物件探しは時間がかかります。焦る気持ちも分かります。
ただ、焦って契約した物件と、何年も付き合うことになります。
次回
次回は、消防法と用途の話を書きます。
物件が見つかっても、まだ入れないことがあります。レンタルスペースは、消防法上「集会場」として扱われるからです。
ただし、用途の定義を変えることで通る場合があります。
一度断られた物件に、どうやって入居できたのか。実際にあった例で書きます。
シリーズ一覧|レンタルスペースの始め方(全13回)
- #1 初月の売上は、5万円でした
- #2 需要は、お客様に聞くのが一番早い
- #3 初期投資が少ない領域ほど、競合が多い
- #4 最初に揃えない。聞かれてから足す
- #5 「レンタルスペース? 何それ」から始まります
- #6 パルコから1分の物件を、諦めた話(この記事)
- #7 断られた物件に、入居できた話
- #8 開業前の挨拶が、後で効きます
- #9 この商売は、魚屋さんと同じです
- #10 ゴールは、家賃の2倍です
- #11 一人で5スペース。ただし休みはありません
- #12 規約を一番読んでいるのは、悪意を持った人です
- #13 最終回|どこにお金をかけるか
あわせて読みたい|選ばれるレンタルスペースの作り方
すでに運営されている方向けの連載です。料金、写真、集客、清掃、リピーターまで全10回。
【筆者】
レンタルスペースALBE 運営会社 株式会社ファーストクリエイト 代表取締役 鬼頭創一