【レンタルスペースの始め方 #6】パルコから1分の物件を、諦めた話

事業者の方へ

レンタルスペースにおいて、立地は最も重要です。

どれだけ素敵なスペースを作っても、集客しにくい立地では難しい。

個人の集まりにしても、イベントにしても、集まりやすい場所であることは選択肢としてかなり上位に来ます。

ただし、ここで誤解されやすいことがあります。

駅前立地が絶対ではありません。

今回は、立地の考え方と、私たちが物件を諦めた実例を書きます。


駅前が絶対ではない理由

名古屋で運営していて実感するのは、土地柄によって正解が変わるということです。

名古屋は車社会です。

だから、駐車場が大事になります。

少し離れていても、駐車場があれば集客は可能です。逆に、駅前でも駐車場がなければ使いにくい利用があります。

搬入がある催しなら、なおさらです。


郊外型も狙えます

スペースの種類によっては、郊外型も十分に狙えます。

たとえば、大型ショッピングモールの近隣でエクササイズや音楽練習のレッスン。これは有効です。

ただし、理由は「集客」ではありません

ここは補足が必要だと思います。

モールの近隣が良いのは、モールに来た人が流れてくるからではありません。

人が集まる場所は、生活動線に組み込まれているからです。

普段からその方向に人が動いている。買い物に行く、家族を送る、用事を済ませる。そういう動きの中に組み込まれている場所は、行きやすい。

逆に言えば、こうなります。

人が集まらない場所には、そもそも需要がありません。

立地を見るとき、その場所に人の流れがあるかどうかを見ています。駅前かどうかではありません。

そして、家賃が下がります

郊外型の利点は明確です。

家賃も都心と比べると少し安いので、走りやすい。

第3回で書いたとおり、代わりがないスペースは距離を超えて選ばれます。 設備依存型のスペースであれば、この選択肢が現実的になります。


物件を見るときに、確認していること

ここからは実務の話です。

内見のときに必ず確認している項目があります。スペースの規模によって、見る場所が変わります。

大型のスペースの場合

イベントや展示で使うなら、物が入らなければ話になりません。 そして人数が集まるなら、水回りの状況が利用の快適さを左右します。

小型のスペースの場合

規模が小さくても、入りにくい場所は選ばれません。


パルコから1分の物件を、諦めました

実際にあった話を書きます。

条件は、かなり良い物件でした。

立地としては申し分ありません。人の流れも十分です。

それでも、諦めました。

理由は、階段でした

その物件は2階にあり、そこまでの動線が階段しかなかったのです。

エレベーターがない。

それ以外はすべて合格点でした。家賃も、場所も、広さも。

しかし、この一点は譲れない条件でした。

理由は、搬入出です

なぜそこまでこだわるのか。

搬入・搬出で苦労するからです。

展示の什器、機材、商品。それを毎回、階段で2階まで運ぶ。主催者にとっては相当な負担になります。


主催者の気持ちになれば、分かります

そして、ここが判断の核心です。

利用後に「良かったけど……」と、何か引っかかりができると、再度の予約の気持ちは削がれます。

内容は良かった。場所も良かった。でも、搬入が大変だった。

そうなると、こうなります。

「ちょっと大変だったから、次の機会は他もあたってみようかな」

一度でもそう思われたら、リピートは遠のきます。

前々回で書いたとおり、レンタルスペースの売上を支えるのはリピーターです。最初から「良かったけど……」が付く物件を選ぶのは、自分で不利を背負うことになります。


妥協は、後で後悔につながります

私たちの物件選びの基準は、はっきりしています。

何か一つでもNGな項目があれば、その物件は諦めます。

理由は単純で、妥協は後で後悔につながるからです。

契約したら、変えられません

内装は変えられます。設備は足せます。料金も見直せます。

しかし、建物の構造は変えられません。

エレベーターがない物件に、後からエレベーターは付きません。搬入経路が狭い物件は、ずっと狭いままです。

そして家賃は、契約している間ずっと発生します。

「この一点だけ我慢すれば」と思って契約すると、その一点を毎月お金を払いながら我慢し続けることになります。

良い条件が揃っているときほど、危ない

パルコから1分で、家賃も良い。こういう物件に出会うと、気持ちが先に動きます。

「ここを逃したら、次はいつ出るか分からない」

その焦りが、判断を鈍らせます。

良い条件が9つ揃っていても、譲れない1つが欠けているなら、それは自分の物件ではありません。


まとめ

立地について、3つだけ。

1. 駅前が絶対ではない

土地柄によって正解が変わります。名古屋なら駐車場。郊外なら生活動線。

2. 人の流れがあるかどうかを見る

集客できる場所かどうかではなく、そもそも人がその方向に動いているか。 人が集まらない場所には、需要がありません。

3. 一つでもNGがあれば諦める

建物の構造は変えられません。そして、主催者が「良かったけど……」と思う要素は、次の予約を確実に削ります。

物件探しは時間がかかります。焦る気持ちも分かります。

ただ、焦って契約した物件と、何年も付き合うことになります。


次回

次回は、消防法と用途の話を書きます。

物件が見つかっても、まだ入れないことがあります。レンタルスペースは、消防法上「集会場」として扱われるからです。

ただし、用途の定義を変えることで通る場合があります。

一度断られた物件に、どうやって入居できたのか。実際にあった例で書きます。


シリーズ一覧|レンタルスペースの始め方(全13回)

あわせて読みたい|選ばれるレンタルスペースの作り方

すでに運営されている方向けの連載です。料金、写真、集客、清掃、リピーターまで全10回。


【筆者】

レンタルスペースALBE 運営会社 株式会社ファーストクリエイト 代表取締役 鬼頭創一

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