
この連載も、今回が最終回です。
最後は、予約システムをどうするかという話から始めます。
そして、そこからこのシリーズ全体で書いてきたことを整理して終わりたいと思います。
選択肢は、2つあります
予約の仕組みをどうするか。大きく分けて2つです。
- 自分で小規模なシステムを作って、育てていく
- ASPを活用する
前者は、以前なら現実的ではありませんでした。AIの登場で、状況が変わってきています。
私たち自身、2026年に予約システムを自社で開発しました。コードが書けない人間が、2週間で作りました。
その過程は別の連載で詳しく書いていますので、興味のある方はそちらをご覧ください。
ただし、最初はASPをおすすめします
それでも、これから始める方にはASPをおすすめします。
理由があります。
まず、運用を理解してください
いきなり自作が難しいようであれば、ASPなどを活用して運用方法を理解するほうがいい。
予約の受け方。キャンセルの扱い。料金の設定。回数券や定期利用の管理。
やってみないと分からないことばかりです。
仕組みが分かれば、自作に持ち込めます
そして、ここが大事なところです。
仕組みが分かれば、AIで自作システムに持ち込みやすくなります。
自作で一番難しいのは、技術ではありません。何を作りたいのかを、体系的に説明できるかどうかです。
ASPを使った経験があれば、それができます。「この画面のこの機能が、うちには合わない」「この場面でメールが飛んでほしい」。具体的に言えるようになります。
ASPを使った期間は、回り道ではありません。経験が貯まる準備期間です。
移行のタイミング
では、いつ自作に移るのか。
これはそれぞれの事情によりますが、ひとつポイントになるタイミングを挙げるとすれば、
第10回で書いた「家賃に対して売上の2倍」が見えてきたときです。
なぜ、そこなのか
ある程度の利益構造が見えてくれば、広告投資やWEBサイトの強化などの道に向かえます。
逆に言えば、それが見えないうちに投資しても、回収できるかどうか分かりません。
2倍は黒字化のゴールであると同時に、次の投資を始める合図でもあります。
自作システムの価値は、2つあります
そして、自社サイトからの予約が取れるようになると、何が変わるか。
① 手数料がなくなります
公式サイトからの予約は、手数料なしです。
ポータル経由の手数料は、おおむね30%。つまり、30%の売上アップが見込めるツールに変わってきます。
同じ予約でも、入ってくる金額が3割違います。
② 顧客情報を、自分たちで保有できます
そして、こちらのほうが大きいかもしれません。
顧客情報を持つことで、今後のマーケティングにも活用できます。
誰が、いつ、何のために使ったのか。何度目の利用なのか。
この情報は、ポータル経由では手に入りません。
そして、次の施設を出したときにも使えます。一度作った資産が、二度三度と働きます。
最後に|どこにお金をかけるか
ここが、このシリーズで一番お伝えしたいことかもしれません。
大事なのは、どこにお金をかけるかです。
- ポータルサイトに、手数料として30%を支払い続けるのか
- 自社サイトや広告費に投資するのか
最終的に自分たちの資産になるのは、後者です。
同じお金でも、残るものが違います
ポータルに払う30%は、その予約が終われば消えます。何も残りません。 翌月も、また30%を払います。
自社サイトや広告に投じた分は、検索順位として残り、顧客リストとして残ります。
同じ支出でも、資産になるかどうかがまったく違います。
ただし、順序を間違えないでください
念のため書いておきます。
立ち上げ期は、ポータルを使ってください。
第9回で書いたとおり、自社サイトも検索順位も口コミもない状態から直販だけで立ち上げるのは現実的ではありません。手数料を払っても、空室のままよりいい。
利益構造が見えてから、自前に切り替えていく。
順序の問題です。
このシリーズで書いてきたこと
13回を振り返ると、繰り返し同じ形が出てきました。
- 集客は、ポータルから始めて、直販へ
- 予約システムは、ASPから始めて、自作へ
- 設備は、ミニマルに始めて、需要に応じて拡大
- 用途は、撮影スタジオから始めて、多目的へ
全部、借りて始めて、育ったら自前にするという同じ形をしています。
そして根っこにあるのは、第1回で書いた軸です。
最初から完璧を目指さず、走りながら方向を決める。
自分で方向を決めるのではなく、お客様のニーズに合わせていく。 ビジネスとしては、そのほうが自然だと思っています。
隠さずに書いてきたつもりです
この連載では、うまくいった話だけを書かないように気をつけました。
- 不動産オーナーに断られることは多い
- 初月の売上は5万円で、手応えを感じるまで2年かかった
- 半年でクローズした施設がある
- 買って外した設備がある
- 一人で5スペース回せるが、休みはない
これから始める方が、最初の1年で「思っていたのと違う」と感じて諦めてしまうのがもったいないと思ったからです。
そういうものだと知っていれば、続けられます。
それでも、やってみる価値はあります
最後に、これから始めようと考えている方へ。
やってみて、走りながら考えて進めていける事業です。
飲食店のように、業態を変えるのに大掛かりな改装は要りません。仕入れも、調理もありません。最初の判断を間違えても、方向を変えられます。
そして今は、10年前よりはるかに条件が良い。スマートロックで無人化できます。予約から決済まで自動化できます。ポータルサイトという集客の入口があります。DIYの方法はYouTubeで学べます。
私たちが手探りでやったことの多くが、今はもっと簡単にできます。
やってみる価値はあると思います。
おわりに
全13回、お付き合いいただきありがとうございました。
この連載が、どなたかが一歩を踏み出すきっかけになれば嬉しく思います。
そして、すでに運営を始められている方向けには、別の連載も書いています。料金設定、写真、Googleビジネスプロフィール、清掃、リピーター、困った利用者への対応。運営が始まってからの話は、そちらでご覧ください。
シリーズ一覧|レンタルスペースの始め方(全13回)
- #1 初月の売上は、5万円でした
- #2 需要は、お客様に聞くのが一番早い
- #3 初期投資が少ない領域ほど、競合が多い
- #4 最初に揃えない。聞かれてから足す
- #5 「レンタルスペース? 何それ」から始まります
- #6 パルコから1分の物件を、諦めた話
- #7 断られた物件に、入居できた話
- #8 開業前の挨拶が、後で効きます
- #9 この商売は、魚屋さんと同じです
- #10 ゴールは、家賃の2倍です
- #11 一人で5スペース。ただし休みはありません
- #12 規約を一番読んでいるのは、悪意を持った人です
- #13 最終回|どこにお金をかけるか(この記事)
あわせて読みたい|選ばれるレンタルスペースの作り方
すでに運営されている方向けの連載です。料金、写真、集客、清掃、リピーターまで全10回。
【筆者】
レンタルスペースALBE 運営会社 株式会社ファーストクリエイト 代表取締役 鬼頭創一