
利用規約は、開業のときに一度作って、そのまま使い続けている事業者が多いと思います。
気持ちは分かります。一度作れば動きますし、見直すきっかけもありません。
ただ、私たちは定期的な見直しをおすすめします。
理由があります。
今回は、規約の話と、保険と事故の話を書きます。
土台は、弁護士に相談して作りました
まず、私たちの経緯から。
10年ほど前に事業をスタートしたとき、利用規約や契約書類は一通り弁護士に相談して作りました。
ここは専門家に頼んだほうがいいと思っています。自己流で書いた規約は、いざというときに効きません。
そして、そこから少しずつ変更をかけていきました。
更新の理由は、3種類あります
10年やってきて、規約の更新はよくあります。
理由を分類すると、3つになります。
① 運営の判断で変えるもの(ソフト面)
キャンセルポリシーの変更や、支払い方法の変更など。
こちらの都合や、運用の改善で変わる部分です。自分たちで決められます。
② 施設が増えることで発生するもの(ハード面)
新たなスペースが追加になることで、規約に反映すべき条件が生まれます。
たとえば、第7回で書いた消防法の話です。
用途をポップアップに限定することで入居できた物件がありました。このとき、利用できる案件の制限を規約に落とし込む必要があります。
そうしないと、運用が担保できません。
事業が広がること自体が、更新の理由になります。
③ 事故が起きた後の対策
そして3つ目。悪意のある利用者への対応として、後から追加するものです。
たとえば、身分証明書の提示。
当初はありませんでした。
トラブルが起きてから、必要だと判断して追加した項目です。
最初から完璧な規約は、作れません
ここで、ひとつ書いておきたいことがあります。
何が起きるか分からないうちは、防ぎようがありません。
弁護士に頼んでも、業界特有のトラブルまでは想定しきれないのが実情です。私たちも、実際に起きてから初めて「これは規約に入れておくべきだった」と気づいてきました。
だから、起きたら足す。
第1回で書いた「最初から完璧を目指さず、走りながら方向を決める」という考え方は、規約についても同じです。
身分証の提示は、よく効きます
3つ目の例として挙げた身分証について、少し補足します。
悪意を持って使おうとする人は、身分証の提示をすごく嫌がります。
当然だと思います。めちゃめちゃにして帰るつもりの人が、自分の痕跡を残していくはずがありません。
そして、ここが重要なところです。
真っ当なお客様は、身分証の提示を嫌がりません。
会社で借りる方も、家族で使う方も、普通に応じてくださいます。
同じルールなのに、相手によって効き方がまったく違う。
一つの条項が、そのままフィルターとして働きます。
なぜ、定期的に見直すのか
ここが今回のタイトルにした部分です。
多くの事業者は、最初に作った利用規約を長い間そのまま使っているのではないでしょうか。
これは見直すことをおすすめします。
理由は、こうです。
悪意を持ってレンタルスペースを使おうと思っている人たちは、意外と利用規約や契約内容を読んでいると思われるからです。
普通のお客様は、読み飛ばします
考えてみてください。
真っ当な利用者は、規約をじっくり読みません。予約の流れで同意して、使って、帰ります。
一方で、抜け穴を探している人は読みます。
どこまでやっても大丈夫なのかを確認するために読むのです。
だから、古い規約は穴になります
環境は変わります。利用の形も変わります。
規約が古いままだと、そこが穴になります。
そして、その穴を見つけるのは、こちらではなく相手のほうです。
ここからは、保険と事故の話です
後半は、事故への備えについて書きます。
施設賠償責任保険に入っています
新しいスペースができると、その都度、損害保険に加入しています。
施設賠償責任保険です。決まった業者さんにお願いしています。
利用者には、保険加入を求めていません
よく聞かれる点ですが、利用者側に保険加入は求めていません。
イベント主催者にご自身で保険をかけていただく運用もあると思いますが、私たちはやっていません。
ある程度の物損は覚悟したうえで貸している、という考え方です。
ほとんどは、小規模な物損です
実際に起きることは、ほとんど物損です。
備品や設備を壊してしまった場合に、保険業者さんに相談することにしています。
ただし、これもほとんど小規模なものが多いので、実際に保険屋さんに対応してもらったことはあまりありません。
ほとんどのお客様は、すぐ報告してくださいます
そして、これが実感です。
ほとんどのお客様は、事故が起こったときにすぐご報告いただいて、問題なく処理しています。
壊してしまった。汚してしまった。その連絡さえあれば、たいていのことは片付きます。
問題は、破損ではなく「逃げること」です
ひとつ、事例を紹介します。
壁に両面テープで装飾を貼り付け、壁紙をボロボロにして帰ったお客様がいました。
こちらとしても保険に加入しているので、穏便に済ませたいと思っていました。
ところが、連絡にも応じず、メールにも返答がありません。
仕方なく、弁護士さんを通じて話をまとめることになりました。
破損そのものは、想定内です
そもそもレンタルスペースは、お客様にお貸しするわけですから、ある程度の物損は覚悟して事業をしています。
壁紙が傷むこと自体は、起こりうることです。
しかし、このように逃走するようなお客様に対しては、やはりそれなりの対応になってきてしまいます。
問題は破損ではなく、逃げることです。
おそらく、他所でも同じです
おそらくこのお客様は、他でも同じように壁紙を剥がしているのだと思います。
一度で済む話ではないはずです。
まとめ
1. 規約の土台は、弁護士に相談して作る
自己流で書いたものは、いざというときに効きません。
2. 更新の理由は3種類
運営の判断(ソフト面)、施設の追加(ハード面)、そして事故を受けた対策。
3. 最初から完璧な規約は作れない
何が起きるか分からないうちは、防ぎようがありません。起きたら足す。
4. 定期的に見直す
規約を一番読んでいるのは、抜け穴を探している人です。 古い規約は、そのまま穴になります。
5. 保険には入る。ただし物損は覚悟のうえ
ほとんどのお客様は、その場で報告してくださいます。
次回|最終回
次回で、この連載は最終回です。
予約システムをどうするかという話を書きます。
自分で作るか、ASPを使うか。そして、どちらから入るべきか。
このシリーズを通して書いてきた「借りて始めて、育ったら自前にする」という考え方を、最後にもう一度整理します。
シリーズ一覧|レンタルスペースの始め方(全13回)
- #1 初月の売上は、5万円でした
- #2 需要は、お客様に聞くのが一番早い
- #3 初期投資が少ない領域ほど、競合が多い
- #4 最初に揃えない。聞かれてから足す
- #5 「レンタルスペース? 何それ」から始まります
- #6 パルコから1分の物件を、諦めた話
- #7 断られた物件に、入居できた話
- #8 開業前の挨拶が、後で効きます
- #9 この商売は、魚屋さんと同じです
- #10 ゴールは、家賃の2倍です
- #11 一人で5スペース。ただし休みはありません
- #12 規約を一番読んでいるのは、悪意を持った人です(この記事)
- #13 最終回|どこにお金をかけるか
あわせて読みたい|選ばれるレンタルスペースの作り方
すでに運営されている方向けの連載です。料金、写真、集客、清掃、リピーターまで全10回。
【筆者】
レンタルスペースALBE 運営会社 株式会社ファーストクリエイト 代表取締役 鬼頭創一