
前回、初期投資が参入障壁になるという話を書きました。
まとまった投資が必要な領域は、競合が少ない。だから守りやすい。
そう書いた直後に、正反対のことを書きます。
最初から大量の資金を投入するのは危険です。
矛盾しているように見えると思います。ただ、これは順序の話です。今回はそこを整理します。
投資は必要。ただし、いつするかが問題です
結論から書きます。
投資は必要です。 それは前回書いたとおりです。
問題はタイミングです。
需要の高まりとともに投資を拡大する。 これがビジネスの基本だと思っています。
まだ需要が見えていない段階で設備を揃えても、それが当たる保証はありません。そして外したときに残るのは、使われない設備と、それを買った分の穴です。
私たちも、最初から多目的ではありませんでした
実例で書きます。
現在の名駅フリースペースは、会議、ママ友会、コスプレ、パーティー、展示会と、用途を選ばずに受けられるスペースになっています。
ただし、最初からそうだったわけではありません。
第1回で書いたとおり、ここは撮影スタジオとしてスタートしています。
やったのは、要望に応えることでした
では、どうやって多目的になったのか。
お客様からの要望に、応えていっただけです。
- 「椅子やテーブルはありますか?」と聞かれて、椅子とテーブルを買う
- 「コンサートできますか?」と聞かれて、音響設備を買う
その繰り返しです。
先に揃えたのではありません。聞かれてから足しました。
この順番には、意味があります
先に揃えると、当たるかどうかが分かりません。
聞かれてから足せば、少なくとも一人は必要としていることが確定しています。そして一人が言うことは、たいてい他の人も思っています。
要望に応えた分だけ、受けられる用途が増えていきました。
これが、時間はかかりましたが、確実な広げ方でした。
できることは、自分たちでやります
ミニマルに始めるというのは、買わないことだけではありません。
自分たちでやることも含まれます。
私たちは、DIYで塗装や壁紙の張り替えなどをやっています。
業者さんに頼むことばかりではありません。自分たちでできることは、自分たちでやる。
今は、調べればできます
これができるようになった理由は、はっきりしています。
最近はYouTubeなどで、いろいろと情報収集できるからです。
昔なら職人さんに頼むしかなかった作業が、調べればある程度できてしまう。この10年で、一番変わったことのひとつかもしれません。
サイトも、テンプレートで作りました
同じ話は、開業時にもありました。
第1回で書いたとおり、最初のウェブサイトはデザイナーも使わず、テンプレートで作りました。
弊社はウェブ制作もやっている会社です。作ろうと思えば、きちんと作れました。
それでも、テンプレートで出しました。
売れるかどうか分からないものに、最初からお金をかける理由がなかったからです。
そして、足すだけではありません
ここからが、今回で一番書きたいことです。
引くこともあります。
名駅フリースペースには、当初、撮影用の家具類が多くありました。
撮影スタジオだったので、当然です。当時の判断としては正しかった。
ところが、邪魔になりました
用途が多目的に広がるにつれて、状況が変わりました。
多目的に使われるということは、お客様がそれぞれの世界観を持ち込むということです。こちらの色が強いと、その邪魔になります。
そこで、できるだけ世界観を崩さないようにと考えて、今では最低限の家具類しか置いていません。
正しかった投資が、負債になりました
これが重要な点です。
撮影スタジオとして買った家具は、間違った買い物ではありませんでした。
しかし用途が変わったことで、抱えているだけのものになった。
引くという判断は、自分で決めました。古いものは捨て、使えるものは他のスペースで転用して、やりくりしました。
もっとも、これができたのは他にスペースがあったからです。1つしかなければ、全部処分することになります。
ミニマルの本当の意味
ここまで書いてきて、整理できることがあります。
ミニマルに始める理由は、2つあります。
1. 無駄遣いを避けるため
これは分かりやすい理由です。当たるか分からないものに、先にお金を使わない。
2. 身動きが取れなくなるのを避けるため
こちらのほうが、実は大きい。
たくさん抱えていると、方向を変えられません。
第1回で、このシリーズの軸として「最初から完璧を目指さず、走りながら方向を決める」と書きました。
走りながら方向を決めるには、身軽でないといけません。
設備を揃えすぎた状態で「やっぱりレッスン向けに寄せよう」と思っても、投じた分が惜しくて動けなくなります。投資が判断を縛ります。
自分で貼った壁紙なら、貼り替えるのも自分でできます。変えるコストが低ければ、変えられます。
常に、市場は動いています
私たちがこの10年でやってきたことは、結局これに尽きます。
常にお客様や市場の変化に、柔軟に対応していく。
第2回で書いたとおり、需要は動きます。コロナ禍で一度ゼロになり、戻ってきたときには中身が変わっていました。
そのたびに、足したり引いたりしてきました。
最初に完成させようとすると、変化に対応できません。
まとめ
これから始める方に、お伝えしたいことは3つです。
1. 投資は必要だが、最初から大量投入は危険
需要が見えてから、そこに向けて投じる。
2. 聞かれてから足す
先に揃えるより確実で、外しにくい。
3. できることは自分でやる
今はYouTubeで調べられます。そして自分でやったものは、自分で変えられます。
身軽であることが、この事業では強みになります。
次回
次回から、物件の話に入ります。
まずは、不動産オーナーにどう理解してもらうかです。
レンタルスペースは、オーナーから見ると「何それ」という業態です。地方都市では、又貸しと認識されて苦労します。
私たちがどう説明してきたか、そしてそれでも断られることが多いという現実について書きます。
シリーズ一覧|レンタルスペースの始め方(全13回)
- #1 初月の売上は、5万円でした
- #2 需要は、お客様に聞くのが一番早い
- #3 初期投資が少ない領域ほど、競合が多い
- #4 最初に揃えない。聞かれてから足す(この記事)
- #5 「レンタルスペース? 何それ」から始まります
- #6 パルコから1分の物件を、諦めた話
- #7 断られた物件に、入居できた話
- #8 開業前の挨拶が、後で効きます
- #9 この商売は、魚屋さんと同じです
- #10 ゴールは、家賃の2倍です
- #11 一人で5スペース。ただし休みはありません
- #12 規約を一番読んでいるのは、悪意を持った人です
- #13 最終回|どこにお金をかけるか
あわせて読みたい|選ばれるレンタルスペースの作り方
すでに運営されている方向けの連載です。料金、写真、集客、清掃、リピーターまで全10回。
【筆者】
レンタルスペースALBE 運営会社 株式会社ファーストクリエイト 代表取締役 鬼頭創一